小交響曲 (グノー)

シャルル・グノーの手によって1885年に生み出された《9つの管楽器のための小交響曲 変ロ長調》（仏語：Petite Symphonie pour 9 instruments à vent）は、文字通り9名の管楽器奏者のために書かれた室内楽作品です。この楽曲は、1879年にフルート奏者として名高いポール・タファネルが設立した「管楽器室内楽協会」（Société de musique de chambre pour instruments à vent）に献呈されており、当時のパリにおける管楽器演奏の隆盛を背景に持つ作品と言えます。

本作の初演は、パリの著名なホール、サル・プレイエルにて、作曲が完成した年の1885年4月30日に、献呈先である管楽器室内楽協会のメンバーによって行われました。

グノーはかつて、30歳代の頃に古典的な管弦楽編成と確立された楽曲構成に基づいた二つの交響曲を作曲しています。これら大規模なオーケストラ作品とは対照的に、《9つの管楽器のための小交響曲》は「交響曲」という名称を冠してはいますが、その実態は室内楽の領域に属する作品です。全体的な楽曲の構成は簡潔で、作品の規模も比較的小ぶりにまとめられています。この点は、後世、特に20世紀に入ってから多く見られるようになった「シンフォニエッタ」や「室内交響曲」といった、従来の交響曲よりも小規模で編成を限定した作品群の萌芽、あるいは先駆けとして位置づけられる要因となっています。

使用される楽器編成は以下の通りです。

フルート1奏者
オーボエ2奏者
クラリネット2奏者
ホルン2奏者
* ファゴット2奏者

この編成は、18世紀後半から19世紀前半にかけてヨーロッパで広く流行した、管楽器によるアンサンブルである「ハルモニームジーク」（Harmoniemusik）の典型的なスタイルに基づいています。ハルモニームジークでは、通常、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットがそれぞれ2本ずつ用いられることが一般的でしたが、グノーはこの標準的な8本の編成に、フルートを1本加えることで、より色彩豊かで繊細な響きを実現しています。

楽曲は全4つの楽章で構成されており、全体の演奏時間は約20分程度です。各楽章の構成は以下のようになっています。

1. Adagio - Allegretto: 遅い序奏に続く、速く活発な主部。
2. Andante cantabile: 「歌うように」と指示された、穏やかで叙情的な遅い楽章。
3. Scherzo: 諧謔的でリズミカルな速い楽章。
4. Finale: 曲を締めくくる、快活な終結部。

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