小倉康嗣

小倉康嗣氏は、1960年5月28日に東京都で生まれた日本の実業家です。物流業界の最大手の一つであるヤマトグループにおいて、要職を歴任し、最終的にはヤマト運輸株式会社の代表取締役社長を務めた人物として知られています。彼の家系は、ヤマトグループの歴史と深く結びついています。父は、現在の主力事業である宅急便の生みの親として知られる小倉昌男氏であり、さらに父方の祖父は、大和運輸（現ヤマトホールディングス）の創業者である小倉康臣氏です。三代にわたり、ヤマトグループの礎を築き、発展させてきた家系に生まれた小倉康嗣氏は、その経営の一端を担いました。

小倉氏は、慶應義塾高等学校を経て慶應義塾大学法学部を卒業後、1984年3月に社会人としての第一歩を踏み出しました。新卒で入社したのは、印刷業界の大手である大日本印刷株式会社です。数年間の勤務経験を積んだ後、1989年9月に父や祖父が深く関わったヤマト運輸に入社しました。

ヤマト運輸に入社してからは、多岐にわたる部署での経験を積んでいきます。まず、1990年2月には、ヤマト運輸の事業の根幹である宅急便を推進する部署で課長を務めました。その後は、営業戦略本部や管理本部でプロジェクトマネージャーとして、企画立案や組織運営に関するスキルを磨きました。1995年7月には経理部長に就任し、企業の財務・会計に関する専門知識と実務経験を積みました。

本社部門での経験に加え、現場の責任者としても手腕を発揮します。1997年6月には北信越支社長に就任し、地域の事業運営を統括しました。1999年6月には取締役に選任され、引き続き北信越支社長を兼務します。その後は再び本社に戻り、2000年3月には取締役としてIT戦略推進室長に就任し、情報技術を活用した事業展開を推進しました。さらに、2001年5月からは経営企画本部企画部長も兼務し、ヤマトグループ全体の将来戦略の立案に関わるようになります。2001年7月からは経営企画本部の企画部長職に専念し、戦略部門の中心で活躍しました。

2002年6月には再び取締役として企画部長を務めた後、2003年4月には営業担当の取締役に就任し、ヤマト運輸の事業拡大を牽引する立場となります。2004年4月からは、重要拠点である関東支社長を兼務する形で地域事業の指揮を執りました。同年6月には常務取締役（執行役員）に昇進し、関東支社長を兼任。2005年4月には取締役カンパニープレジデント執行役員となり、ヤマトグループ内の主要カンパニーの責任者としての役割を担いました。

急速に経営の中枢へと進んだ小倉氏は、2005年11月にはヤマト運輸の代表取締役副社長に就任するとともに、持株会社であるヤマトホールディングスの取締役も兼務することになりました。そして、2006年6月、ついにヤマト運輸株式会社の代表取締役社長に就任しました。ヤマト運輸の社長として、創業者である祖父、そして宅急便を育てた父に続く三代目の経営者となりました。

しかし、社長就任からわずか1年足らずの2007年3月16日に、ヤマト運輸の代表取締役社長を退任します。同日、ヤマトホールディングスの専務取締役に就任し、グループ全体の経営に携わる立場へと移りました。同年9月からはヤマト運輸の社長付という立場で、アメリカ合衆国への留学を開始しました。この留学期間中に、クレアモントカレッジズ大学院で学び、2011年にはMBA（EMBA）を取得し、経営学の知見を深めました。

留学を終えた小倉氏は、ヤマトグループの国際事業部門で重要な役割を担います。2011年6月には、米国ヤマト運輸株式会社（Yamato Transport U.S.A., Inc）の取締役社長に就任し、北米におけるヤマトの事業を指揮しました。さらに、2015年1月10日には、メキシコヤマト運輸株式会社（Yamato Transport Mexico S.A.de C.V.）の取締役社長も兼務し、中南米市場における事業展開にも関わりました。国内外の多様な経験を積んだ後、2015年8月1日をもって、ヤマトグループでの全ての役職から退任しました。

小倉康嗣氏は、ヤマトグループの歴史と深く関わる家系に生まれながらも、大日本印刷での勤務経験を経てヤマト運輸に入社し、営業、管理、経理、IT戦略、経営企画、地域統括といった幅広い分野で実務経験を積みました。さらに、代表取締役社長を務めた後、海外留学による自己研鑽を経て、国際事業部門で手腕を発揮するなど、多角的な視点と経験を持つ実業家です。彼のキャリアは、ヤマトグループが国内外で事業を展開する上での重要な一時期を支えました。

もう一度検索