小倉豊文

小倉豊文

小倉豊文（おぐら とよふみ、1899年1月26日 - 1996年6月10日）は、昭和期の日本史・日本文学研究者であり、広島大学の名誉教授を務めました。

経歴

小倉豊文は千葉県市川真間で生まれ、千葉師範学校を経て広島高等師範学校を卒業しました。奈良女子高等師範学校教官を経て広島文理科大学を卒業後、姫路高等学校教授となりました。その後、広島文理科大学助教授となり、1945年8月6日の広島市への原子爆弾投下により被爆し、妻である文子を失いました。教授に昇任後、学制改革により広島大学教授に就任。1965年に定年退官し、広島大学名誉教授となりました。退官後は親和女子大学教授を務めました。

業績

小倉豊文は、日本史、特に広島県・中国地方の地域史研究に尽力しました。広島県文化財協会会長、芸備地方史研究会長も務め、地域文化の発展に貢献しました。

『絶後の記録』

原爆で亡くした妻・文子への私信の形式で綴られた被爆体験記『絶後の記録』は、原爆の悲惨さを伝える貴重な記録として知られています。この作品を通して、小倉は原爆の悲劇を個人的な視点から描き出し、多くの人々に深い感動を与えました。

宮沢賢治研究

日本文学研究者としては、宮沢賢治研究に情熱を注ぎました。1950年には、賢治の誕生日が戸籍上の8月1日ではなく、実際には8月27日であることを初めて指摘し、その後の通説となりました。また、「雨ニモマケズ」の研究においては、長年にわたり手帳の解読に取り組み、詳細な分析と考察を加えました。この研究は、増補改訂を重ねて3度にわたり書籍として刊行され、宮沢賢治研究に大きな影響を与えました。これらの業績が評価され、1992年には宮沢賢治学会イーハトーブセンターより第2回宮沢賢治賞を受賞しました。

小倉豊文が建立した賢治の絶筆短歌の歌碑が、千葉県東金市荒生にある小倉家の墓所に存在します。

主な著書

『絶後の記録 亡き妻への手紙』中央社、1948年
『広島原爆の手記 亡き妻への手紙』八雲井書院、1970年
『絶後の記録 広島原子爆弾の手記』太平出版社〈シリーズ・戦争の証言〉1971年、のち中公文庫
『ヒロシマ-絶後の記録』日本ブックエース〈平和文庫〉
『宮沢賢治の手帳研究』創元社、1952年
『「雨ニモマケズ手帳」新考』東京創元社　1978年
『宮沢賢治「雨ニモマケズ手帳」研究』筑摩書房、1996年
『広島県古美術巡礼』広島県教育委員会事務局調査課、1953年
『聖徳太子と聖徳太子信仰』綜芸舎、1963年
『山陽文化財散歩』学生社〈文化財散歩シリーズ〉、1973年
『広島県の文化財めぐり』第一法規出版、1976年
『宮沢賢治声聞縁覚録』文泉堂出版、1980年
『ノー・モア・ヒロシマ 50年後の空洞と重さ』風濤社、1994年
『The atomic bomb and Hiroshima』translated by Glyndon Townhill.Liber Press c1994

共編著

『教養日本史 改訂版』福尾猛市郎、後藤陽一共編　柳原書店　1959
『地域社会と宗教の史的研究』編　柳原書店　1963
* 『葛原勾当日記』校訂　緑地社　1980


小倉豊文は、研究者としてだけでなく、被爆者としての体験を後世に伝える活動にも尽力しました。その功績は、多くの人々に記憶されています。

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