小原甚八

日本の光学ガラス産業を支えた先駆者：小原甚八の生涯

小原甚八（1888-1968）は、日本の光学ガラス製造において、その発展に欠かせない重要な役割を果たした人物です。彼は、後に世界的に有名な光学ガラスメーカーとなるオハラの創業者として知られています。

東京高等工業学校（現在の東京工業大学）窯業科を1911年に卒業した小原は、1915年、海軍造兵廠に入所。そこで、柴田理八氏らと共に光学ガラスの試作に携わりました。卓越した技術と探究心で頭角を現し、1922年には光学ガラス工場の主任に昇進。日本の光学技術発展に大きく貢献しました。

その後、海軍が光学ガラス製造事業を日本光学工業（現在のニコン）に譲渡したことに伴い、小原は日本光学工業へ移籍。同社の光学硝子研究所の主任として、更なる研鑽を積みました。

しかし、小原の野心は、既存の枠組みを超えていました。1935年、彼は日本光学工業を退社、同年10月、東京蒲田に小原光学硝子製造所（現在のオハラ株式会社）を設立しました。これは、日本における最初の光学ガラス専業メーカーの誕生を意味します。

オハラは、小原の技術力と経営手腕によって、順調に成長を遂げました。高品質な光学ガラスを数多くの光学機器メーカーに供給し、日本の光学機器産業の高度な発展を支えました。小原の技術革新への飽くなき情熱と、確かな品質へのこだわりが、オハラの成功の基盤となりました。

彼の功績は広く認められ、1959年には藍綬褒章を受章。その後も勲四等瑞宝章（1965年）や従五位（1968年）など、数々の栄誉に輝きました。

小原甚八は、単なる企業家としてだけでなく、日本の光学技術の進歩に貢献した技術者、そして先駆者として、その名を歴史に刻みました。彼の情熱と革新性は、現代の光学技術、ひいては日本の産業技術の発展に多大な影響を与え続けています。オハラ株式会社は、現在も世界的な光学ガラスメーカーとして、小原の遺志を引き継ぎ、発展を続けています。小原甚八の生涯は、日本の産業発展の歴史において、重要な一章を成すと言えるでしょう。彼の功績は、多くの後世の人々に、技術革新への挑戦と、たゆまぬ努力の大切さを教えてくれます。

参考文献：
小倉磐夫『国産カメラ開発物語』朝日選書 ISBN 4-02-259784-4

外部リンク：
株式会社オハラ

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