小堀杏奴

小堀杏奴

小堀杏奴（こぼり あんぬ、1909年5月27日 - 1998年4月2日）は、明治から平成にかけて活躍した日本の随筆家です。文豪・森鷗外と後妻・志げの次女として東京に生まれ、幼少期から文学に囲まれた環境で育ちました。

生涯

杏奴は、幼い頃から活発な性格で、弟を守るために他校の生徒と立ち向かうエピソードも残っています。仏英和高等女学校を卒業後、兄とともに画家・藤島武二に師事し、フランス留学も経験しました。帰国後、同じく画家である小堀四郎と結婚し、二児をもうけました。

杏奴の人生は、父・鷗外の存在と深く結びついています。彼女は、鷗外の晩年や家族との思い出を綴った随筆を数多く発表し、特に『晩年の父』は、鷗外研究における重要な資料として高く評価されています。同書では、鷗外を追ってドイツ人女性が来日していたことや、鷗外がその女性と文通をしていたことなどが明かされています。

晩年は、鷗外を主人公にしたテレビドラマが放送されたこともあり、全国各地で講演活動を行いました。2004年には、杏奴の遺品から鷗外の書簡が発見され、大きな話題となりました。

鷗外研究への貢献

杏奴は、父・鷗外に関する回想記を著し、鷗外研究に大きく貢献しました。

『晩年の父』: 鷗外の晩年の様子や家族との思い出を綴った作品。鷗外の人となりを知る上で貴重な資料となっています。特に、鷗外を追ってドイツ人女性が来日していたという記述は、鷗外研究における重要な転機となりました。
鷗外のドイツ人女性: 杏奴は、『晩年の父』で、鷗外が留学中に知り合ったドイツ人女性との関係について言及しました。鷗外が帰国後もその女性と文通を続け、亡くなる前に妻に写真と手紙を焼かせたというエピソードは、鷗外の知られざる一面を浮き彫りにしました。

家族

父: 森林太郎（森鷗外）
母: 森志げ
異母兄: 森於菟（医者）
姉: 森茉莉
弟: 森類
夫: 小堀四郎（画家）
長女: 小堀（横光）桃子（作家横光利一の二男の妻）
長男: 小堀鴎一郎（国立国際医療センター名誉院長）

著作

晩年の父 (岩波書店, 1936)
回想 (東峰書房, 1942)
橡の蔭 (那珂書房, 1943)
母への手紙 (養徳社, 1947)
春 (東京出版, 1947)
最終の花 (みすず書房, 1951)
日々の思ひ (みすず書房, 1954)
静かな日々 (河出書房, 1955)
小さな恋人 (河出書房, 1955)
その他大勢 (宝文館, 1956)
父 (宝文館, 1957)
人生舞台 (宝文館, 1958)
春のかぎり (みすず書房, 1958)
朽葉色のショール (春秋社, 1971)
冬枯れの美 (女子パウロ会, 1979)
追憶から追憶へ (求龍堂, 1980)
不遇の人 鷗外 日本語のモラルと美 (求龍堂, 1982)
のれんのぞき (みすず書房, 2010)

小堀杏奴は、父・森鷗外の娘としてだけでなく、一人の随筆家として、独自の視点と感性で時代を見つめ、数々の作品を世に送り出しました。彼女の作品は、今もなお多くの読者に愛され続けています。

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