小堀桂一郎

小堀桂一郎：ドイツ文学者、比較文学者、そして保守の論客

小堀桂一郎（こぼり けいいちろう）は、1933年生まれの日本のドイツ文学者、比較文学者です。東京大学名誉教授、明星大学名誉教授という学術的な経歴を持ちながら、歴史認識問題や皇室典範問題など、現代日本の重要な課題に対して積極的に発言する保守系の論客としても知られています。

学問の世界

小堀は、東京大学文学部ドイツ文学科を卒業後、同大学院で比較文学比較文化を専攻しました。旧西ドイツのフランクフルト大学とミュンヘン大学への留学経験を持ち、ゲーテ研究でゲーテ賞を受賞するなど、ドイツ文学研究者としての確かな足跡を残しています。その後、慶應義塾大学助手を経て、東京大学教養学部助教授、教授を歴任し、1992年には大学院比較文学比較文化専攻課程主任を務めました。

専門分野は、ドイツ文学、比較文学、比較文化、そして日本思想史と多岐にわたります。特に、ゲーテやホフマンスタールといった近代ドイツ文学の研究から出発し、日本におけるドイツ文学の受容史についても研究を行いました。また、ライフワークとして森鴎外研究に取り組み、多くの著作を発表しています。

歴史認識問題と保守論客としての活動

1980年代初頭から、歴史教科書問題などを契機に、歴史認識問題への発言を開始し、保守系論客として知られるようになりました。東京裁判（極東国際軍事裁判）史観を批判し、1990年代には林健太郎との間で歴史認識論争を展開しました。また、日本会議の設立に参画し、副会長を務めるなど、保守系運動にも深く関わっています。

21世紀に入ってからは、女性天皇・女系天皇を否定する立場を明確にし、「皇室典範問題研究会」の会長として、「皇室典範に関する有識者会議」の方針に反対しました。さらに、アメリカ合衆国下院121号決議（慰安婦決議）の全面撤回を求める抗議書に賛同者として名を連ねるなど、歴史問題に対して積極的に発言しています。

社会活動とその他の活動

小堀は、「日本文化会議」や「教科書正常化国民会議」の設立発起人として、政治運動にも積極的に参加しています。また、「横田めぐみさんたちを救出するぞ! 全国大集会」の呼びかけ人、「天皇陛下の御訪韓問題を考える会」の代表、「日台交流教育会」の会長を務めるなど、幅広い分野で社会活動を行っています。

さらに、2011年には「明治の日推進協議会」が結成され、小堀も代表委員として活動しています。同団体は、11月3日の祝日を、明治天皇の誕生日を祝う戦前の明治節に戻すことを目指しています。

2012年には、安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会を発足させ、安倍晋三の事務所に出馬要請をしました。

上皇明仁（平成在位期の天皇）の譲位の意向表明に対し、「天皇の生前御退位を可とする如き前例を今敢えて作る事は、事実上の国体の破壊に繋がるのではないかとの危惧は深刻である」と述べ、摂政の冊立が最善であると主張しています。

家族と受賞歴

小堀の長女は宗教史学者の小堀馨子です。父は洋画家の小堀稜威雄、祖父は日本画家の小堀鞆音です。義兄（姉の夫）は音楽評論家で図書館情報学者の田辺久之です。

1959年にゲーテ賞、1970年に読売文学賞研究・翻訳賞、1983年に大宅壮一ノンフィクション賞、2000年に正論大賞を受賞しています。

主な著書

小堀は、多数の著書を執筆しており、代表的なものとして『若き日の森鷗外』、『宰相鈴木貫太郎』、『さらば、敗戦国史観』、『再検証東京裁判』、『昭和天皇』、『萬世一系を守る道』などがあります。これらの著書を通して、ドイツ文学、森鴎外研究、歴史認識、皇室典範問題など、多岐にわたるテーマについて、自身の見解を表明しています。

小堀桂一郎は、学問の世界だけでなく、社会や政治の分野でも積極的に活動し、現代日本における重要な論客の一人として、その影響力を発揮しています。

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