小山内宏

小山内宏：時代を映す軍事評論家の生涯

小山内宏（おさない ひろし）は、1916年6月11日に東京で生まれ、1978年1月4日に没した著作家、軍事評論家です。作家・小山内薫の次男として、文芸の血筋を受け継ぎました。妻は随筆家として知られる小山内富子。

生い立ちと学歴

小山内宏は旧制成城高等学校を卒業後、戦前にフィリピンの聖トマス大学に留学し、民族学科を卒業しました。異文化に触れ、国際的な視野を養ったことが、後の評論活動に影響を与えたと考えられます。

戦時中の活動

1941年にフィリピンから帰国後、南洋協会に勤務。1942年には応召され、フィリピン軍政部付となりましたが、病気のため1945年5月に帰還しました。戦時中の経験は、彼の平和への思いを強くしたことでしょう。

ジャーナリスト、そして軍事評論家へ

戦後、小山内宏はジャーナリストとしての道を歩み始めます。1960年の安保闘争以後、アメリカに渡り、各地の戦略研究所などで軍事問題を研究しました。また、1958年からはベトナム、アメリカ、カナダなどを視察し、その目で世界情勢を捉えようとしました。

ベストセラー作家として

1965年に出版した『ヴェトナム戦争：このおそるべき真実』はベストセラーとなり、小山内宏の名を広く知らしめました。ベトナム戦争の真実を伝えようとする彼の強い意志が、多くの読者の心を捉えたのです。

多岐にわたる著作活動

小山内宏は、軍事問題だけでなく、アメリカ社会、沖縄問題、秘密結社など、幅広いテーマで著作を発表しました。『軍国アメリカ：このおそるべき全貌』、『沖縄：この恐るべき歴史と現実』、『秘密結社：暗黒の帝国を解剖する』など、そのタイトルからも、彼の問題意識の高さがうかがえます。

また、『怪獣画報』、『拳銃画報』、『世界の軍艦』など、秋田書店の「写真で見る世界シリーズ」では、子供向けの図鑑も手がけています。円谷英二監修の『怪獣画報』は大伴昌司との共著であり、特撮ファンにとっても貴重な資料となっています。

晩年と死後

小山内宏は1978年1月4日に亡くなりました。墓所は富士霊園の文学者の墓にあります。彼の著作は、今もなお、軍事問題や社会問題に関心を持つ人々に読み継がれています。

著作リスト（一部）

『ヴェトナム戦争 : このおそるべき真実』（講談社、1965年）
『軍国アメリカ : このおそるべき全貌』（講談社、1965年）
『怪獣画報』（秋田書店、1966年）
『沖縄 : この恐るべき歴史と現実』（講談社、1969年）
『世界の軍艦』（秋田書店、1969年）
『秘密結社 : 暗黒の帝国を解剖する』（講談社、1975年）

小山内宏は、時代の変化を敏感に捉え、その問題点を鋭く指摘した評論家でした。彼の著作は、現代社会を理解するための貴重な資料として、今後も読み継がれていくことでしょう。

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