小山内薫

小山内 薫—新劇の父

小山内 薫（おさない かおる、1881年7月26日 - 1928年12月25日）は、日本の近代演劇の先駆者として知られる劇作家であり、演出家、批評家です。彼は自らの半生を日本の演劇界の革新に捧げ、「新劇の父」と称されています。

生い立ちと教育

小山内は広島陸軍衛戍病院長の家に生まれ、早くに父を失ったことが影響し、家庭環境は演劇と深く関わりました。特に母親が芝居好きであったため、少年時代から演劇に親しんでいました。東京帝国大学に進学し、内村鑑三に学ぶ一方で、文化人との出会いや自身の創作にも力を注ぎました。

自由劇場の設立

小山内は1890年代後半から演劇への情熱を深め、1909年には歌舞伎俳優二代目市川左團次と協力して自由劇場を結成しました。この劇団は、近代的な演劇スタイルを目指し、リアリズム演劇の先駆けとなります。初公演でイプセン作『ジョン・ガブリエル・ボルクマン』を上演し、新しい演劇の在り方を模索しました。

築地小劇場の設立

1924年に小山内は、土方与志と共に築地小劇場を設立します。この劇場は新劇運動の中心地となり、さまざまな演出や技法の実験が行われました。小山内はこの場を通じて、ゴーリキーやチェーホフの作品を日本に紹介し、演劇界の発展に寄与しました。特に「演出」という言葉の確立と、演出家という職能の形成に強い影響を与えました。

映画界への進出

小山内の活動は演劇にとどまらず、1919年に松竹の理事になると、トーキー映画の黎明期にも関わります。松竹蒲田撮影所の設立に際しては、撮影総監督として数々の作品の制作に関わったことが評価されています。彼の指導のもと、映画界にも多くの人材が育成されました。

晩年と遺産

晩年の小山内は、NHKでのラジオ劇の演出や演劇時評の執筆を行い、その活動はますます多岐にわたりました。しかし1928年、健康を損ね、急死しました。彼の死は日本の演劇界にとって大きな損失となりました。

小山内の残した作品や活動は、戦後の日本演劇の発展においても重要な位置を占めています。彼が築いた基盤は、今でも多くの劇団や演出家に影響を与え続けているのです。近代日本の演劇界における「新劇の父」と呼ばれる小山内薫の業績は、決して色褪せることのない重要な遺産です。

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