小川全夫

小川 全夫（おがわ たけお）

1943年7月31日生まれ。日本の社会福祉学者であり、山口大学および九州大学の名誉教授を務めています。主に高齢社会や地域福祉といった分野において、教育と研究に多大な貢献をしてきました。

台北市で生を受け、兵庫県で育ちました。学問の道は鹿児島大学文理学部から始まり、その後、九州大学大学院文学研究科社会学科の修士課程を修了しました。研究を深める中で、1996年には「地域の高齢化と福祉 高齢者のコミュニティ状況」と題した論文により、久留米大学から文学博士号を授与されています。

教育者としてのキャリアは、宮崎大学教育学部での講師、助教授としてスタートしました。その後、山口大学人文学部に移り、助教授、教授を歴任し、同学の名誉教授の称号を得ています。1998年には九州大学文学研究科の教授に就任し、研究と後進の指導にあたりました。2006年に九州大学を定年により退官し、ここでも名誉教授の称を受けました。

九州大学退官後もその情熱は衰えず、山口県立大学で教授を務め、さらに2010年からは熊本学園大学の教授として教育活動を継続しました。2014年をもって、長きにわたる大学での教職から退かれました。

小川氏の研究は、単なる理論に留まらず、地域社会における高齢者の生活状況や福祉のあり方に深く根差しています。代表的な著書として、博士論文を基にした『地域の高齢化と福祉 高齢者のコミュニティ状況』（恒星社厚生閣、1996年）や、『よだきぼの世界』（鉱脈社、1996年）などがあります。また、高齢社会の地域政策、家族・福祉社会学、ニューエイジング、東アジアの高齢化問題、ファミリー・ソーシャルワークなど、多岐にわたるテーマで多くの共編著を手がけており、その学術的貢献の幅広さを示しています。


主な共編著には以下のものがあります。

『高齢社会の地域政策 山口県からの提言』（堀内隆治共編著、ミネルヴァ書房、2000年）
『家族・福祉社会学の現在』（木下謙治共編、ミネルヴァ書房、2001年）
『ニューエイジング 日米の挑戦と課題』（安立清史共編、九州大学出版会、2001年）
『老いる東アジアへの取り組み 相互理解と連携の拠点形成を』（編著、九州大学出版会、2010年）
『半完成協奏曲♪さらなる・はんせいきへ♪ 県民"共有の財産"を育てる コープやまぐち50年の軌跡』（監修、有吉政博編著、日本生活協同組合連合会、2013年）
『ファミリー・ソーシャルワークの理論と技法 社会構成主義的観点から』（大下由美, 加茂陽共編、九州大学出版会、2014年）


長年にわたる学術および教育分野での功績が認められ、2025年には瑞宝中綬章を受章することが決定しています。小川全夫氏は、社会福祉学、特に高齢化が進む社会における福祉のあり方や地域コミュニティの役割について、理論と実践の両面から深く探求し続けた研究者であり教育者です。

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