小川未明

小川 未明に関する詳細

小川未明（おがわ みめい、1882年4月7日 - 1961年5月11日）は、日本の小説家であり、特に児童文学作家として広く知られています。本名は小川健作（おがわ けんさく）で、「日本のアンデルセン」とも呼ばれる存在です。彼は浜田広介、坪田譲治とともに、「児童文学界の三種の神器」と評された人物でもあります。娘の岡上鈴江も児童文学者として活躍しました。

来歴

新潟県高田五分一町（現在の上越市幸町）で生まれた小川未明は、父親である澄晴が修験者という特異な家庭環境の中で育ちました。澄晴は、上杉謙信の熱心な信奉者であり、春日山神社を創立するために尽力しました。未明は15歳から20歳の間、神社境内に住んでいたこともあり、その影響が彼の作品にも色濃く残っています。

彼は、旧制高田中学を卒業した後、東京専門学校（後の早稲田大学）で学び、哲学科および英文科を専攻しました。在学中には坪内逍遥や島村抱月から指導を受け、ラフカディオ・ハーンの講義にも感銘を受けました。卒業論文ではハーンについて論じていますが、同時にロシア文学やナロードニキ（人民主義）の思想に対しても興味を持っていました。

未明は1904年に処女作『漂浪児』を発表し、一躍注目を集めました。この作品の発表の際に逍遥から「未明」と名付けられました。彼の多くの作品は、特に清潔な表現が特徴であり、1916年には「遊蕩文学」論争において、漱石と共に遊蕩を描かない数少ない作家として名前を挙げられました。しかし、生活は貧困で苦しいもので、2人の子どもを失うなどの悲劇も経験しました。

友人たちの支援で刊行されたアンソロジー『十六集』に参加したことで、未明は経済的な困難を克服することができました。この本には、多くの有名作家が寄稿し、未明の文学的地位を確立する助けとなりました。

1925年には早稲田の童話会を設立し、翌年には『東京日日新聞』に「今後を童話作家に」という記事を掲載し、児童文学への専念を宣言しました。彼は1946年に創立された日本児童文学者協会の初代会長を務め、1951年には日本芸術院賞を授与されるなど、多くの功績を残しました。しかし、その後の時代には新しい波が起こり、未明は旧式とされる文学に対して批判を受けることになりました。1961年に脳出血で亡くなるまで、彼は79年の生涯を全うしました。

代表作

小川未明の作品は主に短編が中心であり、特に童話においてその才能が発揮されています。彼の代表的な童話には『金の輪』（1919年）、『赤い蝋燭と人魚』（1921年）、『月夜と眼鏡』（1922年）、『野薔薇』（1922年）などがあります。彼の作品は、しばしば人間の情感を深く描写し、子供たちへのメッセージを含んでいます。

人格と趣味

坪田譲治によれば、小川未明は非常に短気な性格であったとされています。彼は料理店や飲み屋でも早く注文し酒を飲む傾向があり、将棋を指す際も勝負がすぐに決まるほど迅速でした。趣味には壺の収集や盆栽がありましたが、彼は飽きっぽく、その場面ごとに愛着を持つものをすぐに手放したりすることもありました。この短気さが彼の童話作品の多くが短編形式である背景とも言われています。

脚光を浴びた後

小川未明の文学の重要さは、彼の逝去後も評価され続け、小川未明文学賞が創設されるなど、彼の遺産は今なお多くの人々に受け継がれています。また春日山神社の境内や、彼の生家跡には詩碑が建立され、彼の業績を称えています。

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