赤い蝋燭と人魚

『赤い蝋燭と人魚』の概要と内容

『赤い蝋燭と人魚』は、1921年に小川未明によって発表された創作童話であり、人間のエゴイズムや異形の者が抱く怨念をテーマにしています。この作品は、新潟県上越市の雁子浜に伝わる人魚伝説に影響を受けており、特に39歳での発表時には児童文学としての新たな地平を開いた作品となりました。

物語の背景

物語は、北の暗い海に住む人魚から始まります。彼女は、自身の子供が幸せになるようにと願い、陸に子供を産む決意をします。人間に優しい心があると信じた人魚は、その願いを抱いて子供を神社の近くで産みます。その子供は、ろうそく屋の老夫婦に拾われ、大切に育てられます。彼女は成長するにつれて美しい娘へと変わり、その才能を生かして絵を描くことで収入を得ていきます。

あらすじ

ある日、娘は自らの手で白いろうそくに絵を描くことを思い付くと、その美しい絵は瞬く間に評判を呼ぶようになります。ろうそく屋は繁盛し、神社に納められた絵付けのろうそくを使った漁では、航海の際に無事帰ってくるという好評が伝わり、神社と街は栄えていきます。しかし、目立つ存在となった娘に目を付けた行商人の香具師が、老夫婦に娘を売るよう頼むことで物語は暗転します。老夫婦は利益に目がくらみ、娘を手放す決断を下してしまいます。

終焉の道

娘が香具師によって連れ去られた際、彼女は悲しみのあまり自らの手で真紅に塗られたろうそくを残していきます。その後、真紅のろうそくを買った女が現れ、海が荒れ狂う日々が始まります。老夫婦は恐れおののき、ろうそく屋を閉めますが、真紅のろうそくが灯る日は続きました。やがて、その火を見た者が海難事故に遭うという噂が広まり、人々は恐れおののき、神社を避けるようになり、ついには町は静まり返ってしまったのです。

雁子浜の人魚伝説

雁子浜の伝説は、実際の水難事故から着想を得たとも言われており、袴形村の神社にまつわる悲恋物語に基づいています。若者と不思議な女との恋は、両者の悲劇的な結末へとつながり、以来、この伝説は語り継がれてきました。現在、雁子浜の神社跡地にはその証として石碑が残されています。

このように、『赤い蝋燭と人魚』は単なる寓話ではなく、人間の欲望や無知、そして愛がもたらす悲劇を描いた深い物語として、今も多くの人々に読まれ続けています。

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