小川由加里

小川由加里（おがわ ゆかり）は、1910年（明治43年）1月28日に生まれ、1981年（昭和56年）8月26日に没した、長野県茅野市出身の彫刻家です。本名は小川緑（おがわ みどり）といいます。

生い立ちと初期の活動

小川由加里は、長野県諏訪郡永明村（現在の茅野市）で生まれました。高等小学校を卒業後、指物師（さしものし）に弟子入りし、木工の技術を習得しました。その後、独立して自営の指物師となりました。1936年には、知人からの依頼で木彫の聖観音像を制作したことが、彫刻家としての道を歩むきっかけとなりました。

横谷観音堂の聖観世音菩薩像

1937年、元陸軍中将の市瀬源助によって、蓼科高原横谷渓谷に護国の霊地が築かれることになりました。小川は、その霊地に奉納する『横谷聖観世音菩薩』像の制作を依頼されました。金沢国有林の原木を用いて、半年間の斎戒沐浴を経て制作されたこの像は、横谷観音堂に鎮座され、多くの人々の信仰を集めました。この作品は、小川の彫刻家としての才能を世に知らしめる重要な転機となりました。

上京と美術学校での学び

1938年、小川由加里は彫刻家としての本格的な活動を目指し、上京して日本美術学校（後の日本美術専門学校）に入学しました。池田勇八、吉田久継、岡野聖雲らに師事し、彫刻の技術と知識を深めました。1939年には、第3回文展に『胸像』を出品し、初入選を果たしました。この入選は、小川の彫刻家としての実力を示すものでした。

戦後の活動と受賞

戦後、小川は日展や全信州美術展などを中心に活動しました。1946年には、木彫作品『影』が日展に入選しました。1948年には、『アイヌのコタン』でアメリカ交易展一等賞を受賞し、国際的にも高い評価を得ました。1950年以降は、日本彫刻クラブの会員として活動しました。また、長野県展では審査員を務め、後進の育成にも尽力しました。

郷土の偉人の胸像

小川由加里は、郷里の偉人たちの胸像も数多く制作しました。茅野市の初代市長である小川一雄や、茅野市尖石縄文考古館に所蔵されている宮坂英弌先生の胸像などがその代表例です。これらの作品は、郷土の歴史と文化を伝える重要な役割を果たしています。

主な受賞歴

1948年 アメリカ交易展一等賞 『アイヌのコタン』
1954年 第2回アジア競技大会金賞 『スポーツ少年』

主なパブリックコレクション

茅野市美術館
茅野市図書館 - 「希望」「髪を持つ女」
茅野市役所 - 「初代市長 小川一雄像」
茅野市尖石縄文考古館 - 「宮坂英弌先生像」

参考文献

* 『20世紀日本人名事典』日外アソシエーツ 2004年

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