小松快禅

小松快禅：囲碁に情熱を燃やした異色の僧侶

小松快禅（生没年不詳）は、江戸時代に活躍した僧侶であり、同時に囲碁の達人としても知られています。加賀国能美郡小松（現在の石川県小松市）に生まれ、後に江戸の増上寺に入り修行に励む傍ら、囲碁の腕を磨きました。宝暦から安永の頃（1751年 - 1780年頃）にかけて、その名声を確立し、当時の囲碁界で一目置かれる存在となりました。

アマチュア碁打ちとしての活躍

快禅はプロ棋士ではありませんでしたが、その実力は玄人はだしでした。当時の記録によれば、彼は賭け碁の世界でも一際目立つ存在であり、多くの対局で勝利を収めていたようです。特に有名なのが、「快禅の大塗り」と呼ばれる独特な戦法です。これは、相手の石を捨て石にし、それによって全局的な厚みを築き、最終的に圧倒的な優勢を確立するという、大胆かつ高度な戦略でした。

本因坊烈元との十番碁

快禅の棋力の高さを示すエピソードとして、本因坊烈元との十番碁が挙げられます。当時、烈元は本因坊跡目であり、六段の実力を持っていました。その烈元と互角に渡り合い、5勝5敗という結果を残したことは、快禅の並外れた才能を物語っています。この対局の棋譜は、『当流碁経類聚』などの江戸中期の素人打碁集に収録されており、今でもその戦略を学ぶことができます。

女性棋士との交流

快禅は、最初の女流棋士と言われる横関伊保とも対局しています。この対局は二子局であり、快禅が上手の立場でした。当時の女性が囲碁を打つことは珍しかったため、この対局は大きな話題を呼びました。

幽霊との対局伝説

快禅には、幽霊と囲碁を打ったという奇妙な伝説も残っています。林元美の『爛柯堂棋話』によれば、上州厩橋（現在の群馬県前橋市）に住む近藤佐司馬という碁好きの女性がおり、快禅に二子で2局勝利しました。その後、佐司馬は快禅に先での対局を願い出ますが、一度は断られます。しかし、数年後、佐司馬が再び快禅の元を訪れ、熱心に対局を懇願したため、快禅は先で対局を受けました。佐司馬は以前とは見違えるほどの実力を見せ、深夜まで及んだ対局の末、快禅がわずか4目勝ちを収めました。佐司馬は礼を述べて帰りましたが、その後、佐司馬が長く患った末に亡くなっており、その対局の日が命日であったことが判明しました。これは、佐司馬の霊が快禅に最後に一局打ってもらうために現れたという、不思議な物語として語り継がれています。

参考文献

安藤如意、渡辺英夫『坐隠談叢』新樹社 1955年
林元美著・林裕校注『爛柯堂棋話』平凡社 1978年

小松快禅は、僧侶でありながら囲碁に情熱を注ぎ、その才能を発揮した異色の人物でした。彼の残した棋譜や逸話は、今もなお囲碁ファンに愛され、語り継がれています。

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