林元美

林 元美（はやし げんび）

林元美（1778年 - 1861年）は、江戸時代に活躍した囲碁棋士であり、家元林家の十一世としてその名を刻んでいます。八段準名人の腕前を持ち、本名は船橋源治、字は寛度、爛柯堂または藍叟とも号しました。

経歴

水戸藩士の子として生まれた元美は、9歳で囲碁を学び始め、その才能を早くから開花させます。11歳の時に本因坊烈元に才能を認められ入門、水戸小僧と呼ばれました。

学識にも優れ、儒学者との親交も深く、文化人としても知られていました。また、棋譜の木版活字作成を工夫し、御城碁の棋譜を広めるなど、囲碁の普及にも貢献しました。

林家を継いだ後は、御城碁にも出仕し、文政12年には七段上手に進みました。

天保の内訌

碁所である本因坊丈和との間では、天保の内訌と呼ばれる事件にも関わりました。丈和の名人碁所就位に際し、元美は八段昇段の密約があったとされています。丈和引退後、八段昇進を求めましたが、寺社奉行からの沙汰はありませんでした。

不行跡と八段昇段

元美は、天保元年に借金問題で訴えられ、処罰を受けたこともありました。嘉永2年に引退し、家督を譲りますが、嘉永5年に八段を許されます。最後の御城碁では、本因坊秀和に敗れました。

御城碁には生涯で12局出仕し、2勝10敗という成績でした。

著作

元美は多くの著作を残しており、中でも『碁経衆妙』は詰碁・手筋の基本書として広く知られています。また、『爛柯堂棋話』は、囲碁に関する史話や逸話を集めた随筆で、当時の囲碁界の様子を知る上で貴重な資料となっています。

『碁経連珠』
『碁経衆妙』
『掌中碁箋』
『碁経精妙』
『爛柯堂棋話』
『碁経衆妙後編』

『爛柯堂棋話』は、囲碁の史話、説話、随筆、記録類を集め、注と評論を加えたものです。家元四家相伝の文書や、同時代の碁界についても記述されています。日本の天平以後、中国、朝鮮、天竺、琉球などの逸話があり、本能寺の変における三劫の話、日蓮と弟子の日朗の対局、武田信玄と高坂弾正の対局、真田昌幸・信幸親子の対局などが棋譜とともに紹介されています。

林元美は、棋士としてだけでなく、文化人、出版者としても多才な人物であり、江戸時代の囲碁界に大きな足跡を残しました。

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