小林光俊

小林光俊：教育と福祉への情熱が生んだ道

学校法人敬心学園の理事長を務める小林光俊氏は、1943年5月2日、富山県富山市八尾町の白木峰山麓にある静かな里山、旧大長谷村で生を受けました。幼少期は、大長谷小学校・中学校の栃折分校に通い、とにかく遊び好きで、周りを引き連れるガキ大将だったといいます。

しかし、彼の行動力は早くから芽生えていました。中学一年生の時、学校や生徒に関する自らの考えを弁論大会で熱弁し、上級生を抑えて優勝。二年時には、柔道を習いたい一心で、用具がない学校の現状に対し、直接村長に掛け合い、村議会を動かして柔道用具と畳を実現させたエピソードは、彼の揺るぎない意志と行動力を物語っています。

中学卒業後は、富山市内の私立高校と地元の県立高校定時制のダブルスクールという異例の道を選択。一年後には富山県立高岡高等学校に編入し、通学時間を郷土の偉人に関する読書に費やしました。大東文化大学経済学部卒業後、その旺盛な探究心はさらに広がり、大学二年生時には、戦後賠償金の使われ方を調査するため単身韓国へ渡航。政府関係者とも会見するなど、若き日のハングリー精神と行動力が後の人生の糧となります。

大学卒業後、株式会社日本マーケティング教育センターに入社。大手家電メーカーの販売網構築などに従事した後、1971年には「みき書房」設立に参加し、発行人・出版局長として活躍しました。この出版事業の傍ら、ジャーナリスト教育の必要性を感じ、1973年にみき書房の事業部として日本ジャーナリスト専門学院を設立。1975年にはこれを独立させ、株式会社日本ジャーナリスト専門学院として新たなスタートを切ります。

教育への道を進む中で、小林氏は社会の変化に目を向けました。ジャーナリスト専門学校の学生から児童文学を学びたいという要望を受けたことを契機に、児童教育分野への展開を決意。1984年、日本児童教育専門学校を開設します。

さらに時代を先取りする形で、1986年には国内初となる福祉教育専門学校、日本福祉教育専門学校を設立。学校法人敬心学園を設立し、理事長兼校長に就任しました。少子高齢化社会の到来を見据え、その担い手育成に力を注ぎます。

この時期、社会福祉の資格制度や教育カリキュラム整備に関わる勉強会に参加していた小林氏は、当時の厚生省官僚らと資格名称について議論する機会を得ます。ケアワーカー養成に関する「社会福祉士二級」といった提案に対し、「一級、二級にすると、二級に専念する人がいなくなる。介護に誇りを持って専念できるようにするには『介護福祉士』という名称が良い」と強く主張。この意見が、現在の介護福祉士という名称が生まれるきっかけの一つとなったことは、彼の福祉教育に対する深い洞察と情熱を示すエピソードです。

その後も事業を拡大し、介護保険法制定前年の1996年には日本リハビリテーション専門学校を設置。2002年には臨床福祉専門学校や日本柔整鍼灸専門学校（現・日本医学柔整鍼灸専門学校）を開設するなど、医療・福祉・教育分野の専門人材育成に邁進します。2013年には学校法人敬心学園と学校法人情報学園を統合。2020年には東京保健医療専門職大学を設置するなど、高等教育機関の設立にも取り組み、学園の規模を拡大させていきました。

順調に見えた事業も、介護報酬の引き下げなど社会保障抑制策の影響を受け、専門学校の定員割れが相次ぐという困難に直面します。敬心学園も学生数が半減するほどの危機に陥りましたが、粘り強い努力の結果、近年は回復傾向にあります。この困難を乗り越える精神は、小林氏の座右の銘である「知者は惑わず、仁者は憂えず、勇者はおそれず」（知・仁・勇）にも通じます。

彼は教育者として、日々「学生に麦を踏む気持ちで接するように」と指導します。この言葉には、富山の雪山で培われたようなタフな根気と、時代の変化に対応し、新たな分野を切り拓いてきた開拓者精神が宿っています。

長年にわたり、日本火災福祉財団（現：日本興亜福祉財団）理事、東京都私立学校審議会委員、全国専修学校各種学校総連合会会長、日本介護福祉士養成施設協会会長など、数多くの公職や団体の要職を歴任。社会福祉教育や専門学校教育の振興に大きく貢献し、2008年には藍綬褒章を受章しました。また、2011年にはサンフランシスコ州立大学客員教授に就任し、2012年には同大学より学術博士号を授与されるなど、国際的な活動も行っています。現在は、外国人留学生高等教育協会の代表理事も務めています。

小林光俊氏は、遊び好きのガキ大将が、自らの行動力と時代の先を読む洞察力、そして困難を乗り越える粘り強さをもって、日本の福祉・医療・教育分野における専門人材育成の道を切り拓いてきた、稀有な教育事業家であり、社会貢献者と言えるでしょう。

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