小林愛雄

小林 愛雄（こばやし あいゆう）

小林愛雄は1881年11月30日に東京で生まれた日本の詩人、作詞家、翻訳家であり、元早稲田実業学校の校長を務めた。彼はまた、家族や友人たちから「ちかお」と親しまれた存在でもある。特に、音楽界における彼の業績は際立っており、日本で初めてオペラの創立に貢献した人物として知られている。

来歴・人物

彼の父である小林好愛は、旧幕臣から転じて東京府議会議員、大蔵省局長、さらには金融機関の社長を務めた。小林愛雄自身は、1892年に東京高等師範学校附属小学校尋常科を経て、1899年に同じく附属中学校を卒業。その後、岡山大学にあたる第六高等学校を卒業し、東京帝国大学の英文科で学んだ。彼の恩師には、夏目漱石や佐佐木信綱が名を連ねている。

また、彼の家族は樋口一葉との親しい関係を持ち、樋口一葉女史文学碑に彼の名前も刻まれている。樋口の晩年を診療した医師は彼の義兄であり、彼らの絆が深かったことを示している。その後、愛雄は音楽と文学の豊かな世界に足を踏み入れていく。

日本オペラの夜明け

1906年、愛雄は小松耕輔や山田源一郎とともに「楽苑会」を設立し、同年に日本初の創作オペラとして『羽衣』を上演した。彼は作詞を手掛け、その後も多くのオペラやオペレッタの翻訳を手がけた。1911年には帝国劇場に招かれ、1913年にはモーツァルトの『魔笛』を日本語に翻訳して上演し、オペラ界に新たな風を吹き込んだ。

その後の1914年には、日本初の口語訳オッフェンバックのオペレッタ『天国と地獄』を翻訳・上演し、1915年にも多くのオペラの翻訳を続けた。特に『恋はやさしい野辺の花よ』は、浅草オペラで広く知られることになる。オペラの普及に尽力し、大衆音楽文化に大きな影響を与えた。

音楽と文学

彼は音楽と文学の両方に情熱を持ち、オスカー・ワイルドの日本語訳を行うなど、文学者としても名を馳せた。1916年には『音楽と文学』という雑誌を創刊し、同人には著名な音楽家や評論家が名を連ねた。この雑誌は音楽と文学の交流の場として多くの人々に支持されたが、1919年に休刊した。

また、彼は1935年に文部省から社団法人として認可された「日本作歌者協会」を設立し、作詞活動にも専念した。教育者としても力を入れ、早稲田実業学校の校長として後進の育成に貢献した。

1945年、愛雄は63歳でこの世を去り、東京の谷中天王寺に眠っている。彼の業績は今も日本の音楽と文学の発展に寄与し続けている。彼が残した詩や翻訳されたオペラは、時代を超えて多くの人々に愛され続ける作品である。彼の名前は、日本の音楽文化史に欠かせない存在として後世に伝えられている。

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