小林禎作

小林禎作（こばやし ていさく）は、1925年10月22日に神奈川県鎌倉市で生まれ、1987年3月8日に生涯を閉じた日本の物理学者であり、特に雪の研究における卓越した業績で知られています。彼の雪に関する研究は、物理学と自然科学の分野に重要な足跡を残しました。

学歴としては、旧制浦和高等学校を経て、1948年に北海道帝国大学（現在の北海道大学）理学部物理学科を卒業しました。卒業後は、北海道江別高等学校で教鞭を執りましたが、1949年8月には北海道大学低温科学研究所に助手として迎えられ、研究者の道を歩み始めます。その後、1963年に助教授、1980年には教授に昇進し、物理学部門の主任を務めました。

小林の研究の中心は、雪の結晶の形成メカニズムとその形状に関するものでした。特に、雪の結晶の形状と雲の温度・湿度の関係を示した中谷宇吉郎の「中谷ダイアグラム」を拡張し、より詳細かつ精密にした「中谷・小林ダイアグラム」を開発したことは、彼の最も重要な業績の一つとして広く知られています。このダイアグラムは、雪の結晶の成長過程における環境条件の影響を明らかにし、雪の科学における基礎的な知見を提供しました。1960年には、この研究成果が評価され、日本気象学会賞を受賞しました。

小林は、研究活動だけでなく、一般の人々に向けて雪の科学の魅力を伝えることにも力を注ぎました。彼の著書は、科学的な厳密さを保ちつつ、雪の美しさや不思議さを分かりやすく解説しており、多くの読者に感銘を与えました。

主な著書には、

『雪の結晶 自然の芸術をさぐる』（講談社ブルーバックス、1970年）
『雪に魅せられた人びと』（築地書館、1975年）
『北海道の自然 4 雪』（北海道新聞社、1977年）
『六花の美 雪の結晶成長とその形』（サイエンス社、1980年）
『雪の結晶-冬のエフェメラル』（北海道大学図書刊行会、1983年）
『雪はなぜ六角か』（筑摩書房・ちくま少年図書館、1984年。後に『雪の結晶はなぜ六角形なのか』としてちくま学芸文庫に収録）

などがあります。これらの著作は、雪の結晶の美しさ、科学的な側面、そして雪に魅了された人々の歴史を紹介しており、幅広い読者に親しまれています。

また、土井利位の『雪華図説・続雪華図説』の編纂も手がけ、雪の結晶に関する古典的な文献を現代に蘇らせる役割も担いました。

小林禎作の業績は、物理学や雪氷学の分野だけでなく、科学コミュニケーションの分野にも大きな影響を与えました。彼の研究に対する情熱と、それを社会に伝えようとする姿勢は、後世の研究者や科学に関心を持つ人々に大きなインスピレーションを与え続けています。

小林の没後、彼の業績を偲ぶ人々によって、多くの追悼記事が発表されました。例えば、黒田登志雄は「小林禎作先生の御逝去を悼む」と題した記事を『日本結晶成長学会誌』に発表し、彼の研究における貢献を称えました。また、鈴木義男は北海道大学低温科学研究所の紀要に追悼文を寄稿し、彼の業績と人となりを偲びました。

小林の血縁者には、元TBSテレビ・ラジオのアナウンサーである小林悠がおり、彼は小林の孫にあたります。

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