ちくま学芸文庫

ちくま学芸文庫について

ちくま学芸文庫（ちくまがくげいぶんこ）は、筑摩書房が手掛ける学術文庫の一つです。このレーベルは1992年6月に、従来のちくま文庫から独立する形で設立されました。その創刊時の特徴は、白いカバー装丁での刊行が行われた点です。初版では、大岡昇平の受賞作や吉本隆明による名著、『源氏物語論』など、様々な分野の優れた書籍が揃えられ、以来、ほぼ毎月4冊が刊行されるペースを守り続けています。

本レーベルでは、文学、思想、歴史や哲学など、多岐にわたる人文学術書がラインナップされており、初心者向けの入門書から、専門的な書籍まで多くの書籍が発行されています。また、古典や専門書の新訳を含む書き下ろしの刊行もしっかりと行われており、学術的な探求をお手伝いしています。具体的には、『ミメーシス』や内藤湖南の『先哲の学問』、小川環樹編訳の『宋詩選』などが、筑摩書房の名を冠した学術文庫に収められています。

ちくま学芸文庫は、以前からの「筑摩叢書」の刊行理念を受け継ぎ、東西の名著の再刊や翻訳を中心に活動しています。そのため、品質を保ちつつの改訂再刊も行われ、多くの古典作品が新たに取り上げられてきました。また、定価は若干高めに設定されている書籍もありますが、それに見合った内容の充実が図られています。特に、初版のみの刊行で早期に品切れとなる書籍も珍しくなく、内藤湖南の『支那絵画史』やジョージ・サンソムの『西欧世界と日本』などがその例に挙げられます。

この文庫の特徴的な点は、中国の古典文献が数多く取り扱われていることで、例えば『史記』や『漢書』、さらには『三国志』の完全翻訳も行われています。仏教に関する書籍や東洋哲学の古典にも力を入れており、そのラインナップは多彩です。江戸時代から明治にかけての資料文献に関しても、充実したコンテンツを提供しており、『新訂 江戸名所図会』や『都名所図会』、さらには『明治事物起源』といった作品が代表的なものです。

また、昭和の歴史にも目を向け、清沢洌の『暗黒日記』など、重要な作品を刊行しています。さらに、現代思想に関しても、ヴァルター・ベンヤミンやミッシェル・フーコーなど、20世紀の思想家たちの著作も多く取り上げられています。そのため、ちくま学芸文庫は現代の哲学や思想を学ぶための重要な資料庫ともなっています。

2005年12月からは自然科学や工学の分野にも手を広げ、青い背表紙が特徴的な「Math & Scienceシリーズ」を発表し続けています。数学分野を特に重視し、科学技術系の書籍を定期的に出版しています。

さらに、近年では高校生や大学生向けの教科書や参考書の復刊にも取り組んでおり、かつて絶版となった名著たちも再び手に取ることができるようになっています。放送大学の教材なども文庫再刊され、新たな読者層を獲得する努力が続けられています。

このように、ちくま学芸文庫は人文学から自然科学まで幅広い分野をカバーすることによって、学問の探求を支える存在として多くの読者に親しまれています。

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