伴蒿蹊

伴 蒿蹊（ばん こうけい）

伴蒿蹊は、享保18年10月1日（1733年11月7日）に生まれ、文化3年7月25日（1806年9月7日）に亡くなった、江戸時代後期の代表的な歌人および文筆家です。彼は、名を資芳（すけよし）と称し、別名として閑田蘆を持っていました。特に、『近世畸人伝』の執筆で知られており、その内容は今なお重要な歴史資料とされています。

来歴と背景

伴蒿蹊は滋賀県近江八幡の商家に生まれました。彼は8歳の時に本家の豪商、伴庄右衛門資之の養子となり、18歳で家督を継いで家業に邁進しました。しかし、36歳で家督を譲り隠居生活に入り、その後は著述活動に専念しました。蒿蹊は擬古文に対して深い関心を持ち、その実践や普及に力を注ぎました。

彼の著作には、近江商人の教訓を集めた『主従心得草』、それに加え、『閑田詠草』『閑田耕筆』『閑田次筆』といったエッセイが含まれています。特に、『近世畸人伝』は有名無名を問わずさまざまな人物の伝記を収めており、18世紀の江戸時代の人々や思想を知るために非常に有益な資料です。

蒿蹊の著作は、彼自身の理想や生活観を反映しており、特に自筆の『伴氏系図』からは、質素な生活を送りながらも多くの寄付や施しを行った道悦居士を理想の人物と見なしていたことが読み取れます。彼はその教えを子孫に伝えたかったと考えられています。

また、蒿蹊は大正4年（1915年）に従四位を追贈され、その文学的功績が評価されました。

『近世畸人伝』の内容

『近世畸人伝』（正編）は全五巻から成り、1790年に京都で初版が印刷されました。作者は伴蒿蹊、絵は三熊花顚によるもので、中江藤樹や貝原益軒といった著名な人物から、一般の町民や農民まで、様々な階層の人物100余名の伝記が収録されています。1798年には、三熊思孝によって続編である『続近世畸人伝』が発表され、正編と続編を合わせると、故人となった約200名の「畸人」を紹介しています。

この書では、特に正編に登場する人物として、中江藤樹、貝原益軒、僧鉄眼、小野寺秀和の妻、遊女大橋、売茶翁、金蘭斎、柳沢淇園、池大雅、祇園梶子などが挙げられます。続編には石川丈山、佐川田喜六、僧元政、本阿弥光悦なども登場し、幅広い内容が展開されています。

これらの記録は、当時の社会や文化に深く根ざしており、江戸時代の多様な人々の生き様を垣間見ることができます。 『近世畸人伝』は、他の時代の伝記に比べても人間の個性や独自性を際立たせる記述が特徴で、当時の社会を知るための貴重な資料となっています。

参考文献

1. 『近世畸人伝』森銑三校注、岩波文庫、初版1940年
2. 『近世畸人伝、続近世畸人伝』宗政五十緒校注、平凡社東洋文庫、初版1972年
3. 『近世畸人伝』中野三敏校注、中央公論新社〈中公クラシックス〉、2005～06年
4. 『伴蒿蹊集』風間誠史校訂＜叢書江戸文庫＞国書刊行会、1993年

このように、伴蒿蹊の功績は文学的のみならず、当時の文化や思想を理解する上でも欠かせない存在であると言えるでしょう。

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