武者小路実岳

武者小路 実岳

武者小路 実岳（むしゃのこうじ さねたけ／さねおか）は、江戸時代中期にあたる享保6年（1721年）10月20日に生まれ、宝暦10年（1760年）8月12日に没した公卿です。父は武者小路公野。朝廷において順調に官職を昇り、正三位にまで達した他、文化人としても和歌に優れた才能を示しました。

生涯と官歴

実岳は、公家である武者小路家に生まれました。当時の公家の慣例として、幼少期より朝廷に出仕し、官位を授けられます。実岳もまた、わずか4歳にあたる享保10年（1725年）に従五位下に叙せられ、そのキャリアの第一歩を踏み出しました。これは、将来の公卿としての道を歩むための重要な起点となります。

その後も実岳の昇進は順調に進みます。

享保19年（1734年）: この年、従五位上に昇進するとともに、侍従に任じられます。侍従は天皇の側近として奉仕する重要な役職であり、彼が朝廷内で一定の信頼を得ていたことを示唆します。
元文3年（1738年）: 正五位下への昇叙がなされます。
元文4年（1739年）: 左馬頭を兼任します。左馬頭は、馬寮という宮廷内の馬に関わる部署の長官を務める官職でした。
寛保元年（1741年）: 左少将に任じられます。左少将は、近衛府という天皇を警護する武官組織の官職であり、より実務的な役割を担う部署での経験を積むことになります。
寛保2年（1742年）: 従四位下に昇進します。
延享元年（1744年）: 正四位下に昇叙されます。
延享4年（1747年）: 左中将に任じられます。左中将は左少将の上位にあたる官職であり、近衛府における地位がさらに高まったことを意味します。
宝暦5年（1755年）: 最終的に従三位に叙せられ、公卿の列に加わります。これは公家としての地位が最高位に近いレベルに達したことを示しており、その能力と家柄が高く評価されていたことがうかがえます。

公卿としては、朝廷における様々な儀式や政務に携わったと考えられます。当時の公家社会は、限られた財源の中で伝統文化の維持や朝廷の権威を示す活動を行っており、実岳もその一員として務めを果たしました。

文化活動

公卿としての務めを果たす傍ら、実岳は和歌にも深い関心を持ち、才能を示しました。当時の公家は、学問や芸術、特に和歌や書道などを嗜むことが一般的であり、文化的な素養が求められました。実岳の詠んだ和歌は、後世に編纂された『新続題林和歌集』に収められています。これは、彼の和歌が当時の歌壇において一定の評価を受け、記録に残される価値があると見なされたことを物語っています。

系譜

武者小路実岳は、武者小路公野の子として生まれました。自身の子としては、武者小路公陰が知られています。公陰もまた公卿となり、武者小路家の系譜を繋いでいきました。

結び

武者小路実岳は、宝暦10年（1760年）に39歳という比較的短い生涯を終えました。しかし、その生涯の中で、幼くして官位を得てから着実に昇進を重ね、従三位という高位に至りました。また、公卿としての務めだけでなく、和歌においても優れた才能を発揮し、その作品を後世に残しています。江戸時代中期の公家社会において、官僚としての能力と文化人としての素養を兼ね備えた人物であったと言えるでしょう。

出典

坂本武雄 著『公卿辞典』七丈書院、1944年。
黒板勝美 編『公卿補任』吉川弘文館、2000年。

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