小沼勝

概要

小沼 勝（こぬま まさる）は、1937年12月30日に北海道小樽市に生を受け、2023年1月22日に85歳で逝去した日本の映画監督です。日活ロマンポルノの黄金時代を支えた主要な監督の一人として知られ、その多作ぶりと独自の耽美的な世界観、特にSM（サディズム・マゾヒズム）を主題とした描写で観客や批評家に強い印象を与えました。

経歴と作風

都立新宿高等学校を経て、1961年に日本大学芸術学部映画学科を卒業後、日活に入社し、助監督として映画制作のキャリアをスタートさせました。1971年、『花芯の誘い』で監督デビューを飾ると、以後、日活ロマンポルノ作品を精力的に撮り続け、その数は40本以上に及びます。彼の作品は、単なる性描写に留まらず、心理的な深みや視覚的な美しさを追求した耽美的なスタイルを特徴とし、特にSMを題材とした分野でその手腕を高く評価されました。

代表作の一つである1974年の『花と蛇』では、原作からの大胆な改変を行い、原作者である団鬼六氏との間に一時的な確執を生じさせました。この出来事の後、小沼監督は団鬼六氏の原作に基づかないSM映画を多数手がけることになります。しかし、数年後には両者は和解に至り、再び団氏の原作を映画化する機会もありました。

ロマンポルノ以降の活動と国際的評価

日活ロマンポルノの時代が終焉を迎えた後も、小沼監督は映画監督としての活動を続けました。また、活躍の場は映画のみに留まらず、テレビドラマの演出も手掛け、日本テレビ系の人気シリーズ『火曜サスペンス劇場』などでサスペンスドラマの演出家としてもその才能を発揮しました。

晩年の大きな功績としては、2000年に監督した一般公開作品『NAGISA』が挙げられます。この作品は、翌2001年に開催された第51回ベルリン国際映画祭のキンダーフィルムフェスト部門（子供映画部門）においてグランプリを受賞するという快挙を成し遂げました。これは、ロマンポルノ監督としてのイメージを超え、幅広いジャンルで高い表現力を持ち合わせていることを世界に証明する出来事となりました。

晩年

長きにわたり日本の映画界に貢献した小沼監督は、2023年1月22日午後2時44分、肺炎のため東京都内の病院で静かに息を引き取りました。享年85でした。そのキャリアは、日活ロマンポルノの時代を象徴する監督として、また、ジャンルを超えた表現者として、多角的な視点から評価されています。

主な監督作品

映画
『花芯の誘い』（1971年）- 監督デビュー作
『花と蛇』（1974年）- 代表的なSM作品
『修道女ルナの告白』（1976年）
『夢野久作の少女地獄』（1977年）
『軽井沢夫人』（1982年）
『NAGISA』（2000年）- ベルリン国際映画祭受賞作
オリジナルビデオ
『雀鬼』シリーズ（1992年〜1995年、1998年〜1999年）
テレビドラマ
『土曜ワイド劇場』シリーズ
『火曜サスペンス劇場』シリーズ

自身が日活ロマンポルノ時代を振り返った著書『わが人生 わが日活ロマンポルノ』も出版されています。

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