小泉次大夫

小泉次大夫（こいずみ じだゆう）

小泉次大夫は、戦国時代から江戸時代初期にかけて活躍した人物で、旗本代官および用水奉行としてその名を残しています。初めは今川義元の家臣・植松泰清の長男として駿河国に生まれ、吉次と名乗っていました。今川氏没落後、徳川家康に仕えるようになり、この時「小泉」姓を名乗るようになりました。小泉氏は元々、信濃国をルーツとする河内源氏村上氏の支流で、駿河に移り住んだ一族です。家紋は丸に片喰を用いていたとされています。一方、次大夫の生家である植松家は甲斐源氏の流れを汲み、鷹岡伝法用水を開削した家柄です。次大夫は植松家の家督を弟に譲り、小泉氏を名乗る道を選びました。

1590年、徳川家康が関東に移封されると、次大夫は新田開発の代官に抜擢され、多摩川からの用水路敷設を進言します。これが採用され、稲毛・川崎領に移り住み、用水奉行として活躍することになります。1597年、二ヶ領用水、六郷用水の建設に着手。多摩川右岸と左岸に陣屋を設け、難工事を指揮しました。工事の成功を祈願するために、日蓮宗の僧侶を招き、小泉陣屋の裏手に妙泉寺を建立したという逸話も残っています。用水路完成後、妙泉寺は移設されましたが、小杉陣屋町には現在、観音堂が建てられています。

1602年、徳川家康から稲毛・川崎領の代官に任命され、1611年には二ヶ領用水、六郷用水が完成します。これらの用水路は「四ヶ領用水」や「次大夫堀」とも呼ばれ、地域の人々の生活を支えました。用水路完成の功績により、次大夫は本田・新田の一部を新たに支給されました。1612年、家督と代官職を長男に譲り隠居しますが、1615年に長男が大阪の陣で戦死したため、代官職に復帰します。翌年、徳川家康が死去すると、次大夫も出家し宗可と号しました。

1619年、代官職を養子に譲り、妙泉寺を移転し妙遠寺と改名した後、隠居生活に入ります。1624年に85歳で生涯を終えました。次大夫の死後、養子の一族は武蔵国の所領を没収され、水利事業とは無関係になりましたが、子孫は豊嶋郡と荏原郡に定住し、その血脈は今日まで受け継がれています。

小泉次大夫は、卓越した土木技術とリーダーシップを発揮し、江戸時代の農業発展に大きく貢献した人物として、今もなお語り継がれています。彼が手がけた用水路は、現代においてもその一部が活用されており、その偉業を偲ぶことができます。

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