六郷用水

六郷用水（ろくごうようすい）

六郷用水は、かつて東京都（旧武蔵国）に存在した用水路で、建設指揮監督者の小泉次大夫の名から次大夫堀（じだゆうぼり）とも呼ばれています。この用水路は、多摩川を水源とし、現在の狛江市から世田谷区、大田区に至る広範囲にわたって、農業用水を供給していました。

概要

六郷用水は、多摩郡和泉村（現在の東京都狛江市元和泉）の多摩川を水源とし、世田谷領と六郷領、つまり現在の狛江市から世田谷区を通り大田区に至る全長23キロメートルの用水路でした。この用水路は、49の村の約1,500ヘクタールに、主に農業用水として水を供給し、地域の人々の生活を支えていました。また、多摩川の対岸の川崎市を流れる二ヶ領用水（こちらも小泉次太夫が建設指揮監督）と合わせて四ヶ領用水（よんかりょうようすい）とも呼ばれています。

歴史

六郷用水は、1597年（慶長2年）から14年の歳月をかけて開削されました。開通から約100年後には荒廃しましたが、1725年（享保10年）に代官田中丘隅（休愚）によって改修されました。この改修は二ヶ領用水と並行して行われ、世田谷領でも六郷用水を利用できるようになりました。

しかし、1945年（昭和20年）に宅地化が進むにつれて、用水路は廃止され、その大半は1970年代（昭和40年代）までに埋め立てられるか、雨水用の下水道として利用されることになりました。現在では、流路の大部分が失われてしまったため、「幻の六郷用水」とも呼ばれています。

現在では、一部区間（世田谷区岡本から大田区田園調布）が丸子川として残っています。また、世田谷区喜多見では、野川からの取水により次大夫堀が再現され、次大夫堀公園として整備されています。大田区内では、中原街道と鵜の木三丁目の間には、湧水を利用して再現された用水路が遊歩道と共に整備されており、そのほかの区間は道路となっています。

現在、用水路の跡地は、道路、緑道（遊歩道）、次大夫堀公園、そして未だに更地の場所として残っています。六郷用水は、既存の多くの河川と分合流あるいは交差していました。

文化遺産としての価値

「旧六郷用水の文化遺産保存事業」が評価され、1988年（昭和63年）には手づくり郷土賞（ふるさとに恵みを与える川）を受賞しました。さらに、2021年（令和3年）には六郷水門が土木学会選奨土木遺産に選ばれるなど、その歴史的価値が認められています。

流路

六郷用水は、以下の地域を流れていました。

狛江市（現在の六郷さくら通り→いちょう通り→世田谷通り南縁）
世田谷区（現在の滝下橋緑道→野川の北側→次太夫堀公園→仙川水神橋付近→丸子川）
大田区（現在の丸子川→多摩川六郷水門）

橋梁

六郷用水には、以下の橋梁が架けられていました。

根河原橋
八幡橋
治太夫橋
調布橋

他の河川との分合流・交差

六郷用水は、以下の河川と分合流、または立体交差していました。

野川（六郷用水と合流・分流）
入間川（六郷用水に合流）
仙川（六郷用水に合流）
谷沢川（六郷用水と立体交差）
呑川（六郷用水と合流・分流）

外部リンク

旧六郷用水散策路（大田区の公式サイト）
旧六郷用水散策路の案内マップ（大田区の公式サイト、PDF）

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