小清水卓二

小清水卓二博士：万葉植物から現代植物学へ繋がる生涯

小清水卓二(1897-1980)博士は、日本の植物生理生態学において重要な役割を果たした学者です。神奈川県足柄で生まれ、大蔵省官吏の父を持つ小清水博士は、東京高等師範学校理科を卒業後、秋田県立本荘中学校で教諭として勤務を始めます。教職の傍ら、東北帝国大学でハンス・モーリッシュ教授から植物学の指導を受け、その後、京都帝国大学理学部に進学。植物生理生態学者である郡場寛博士に師事し、植物生理生態学の道を歩み始めます。

京都府女子師範学校、奈良女子高等師範学校を経て、1949年には奈良女子大学教授に就任。植物学教室を主宰し、理学部学部長も務めました。さらに、1964年には帝塚山大学教授、教養学部学部長、学長代理として、教育者としての活動も精力的に展開します。

小清水博士の専門は植物生理生態学で、その研究テーマは多岐に渡ります。特に、万葉集に詠まれた植物「万葉植物」に関する研究は有名です。大和地方の天然記念物を対象とした生態学的研究や、正倉院御物、古代遺跡から出土した植物遺物の調査など、古代から現代まで繋がる植物研究に取り組みました。

その活動は研究室に留まりません。日本自然保護協会評議員、関西自然科学研究会会長、奈良県文化財保護審議会委員、奈良植物研究会初代会長など、多くの要職を歴任し、日本の自然保護や文化遺産保存に貢献しました。国立公園功労賞、奈良県文化賞、文化財保存功労賞など、数々の賞を受賞し、1970年には勲三等瑞宝章を叙勲、1980年には正四位に追位されています。

小清水博士は旺盛な執筆活動でも知られています。多数の著書、報告書、学術論文を発表し、その内容は万葉植物、奈良の自然、古代植物に関する研究から、植物生理学、植物生長ホルモンに関する専門的な内容まで多岐に渡ります。代表的な著書として、『万葉の草・木・花』『奈良の自然』『母と子のための奈良県の植物』などがあり、一般向けから専門的な研究論文まで、幅広い読者層を対象とした著作を残しました。これらの著作は、現在でも植物学、歴史学、文化史研究において重要な参考文献として活用されています。

例えば、共著として発表された『花の大和路』は、奈良の美しい花々を紹介する図鑑であり、『日本の文様 18 桜』は桜の文様をテーマにした書籍です。また、『真珠の小箱』シリーズでは、奈良の四季折々の情景と植物文化を紹介しています。これらの著作を通して、小清水博士は、自然への愛情と深い知識を一般の人々にも広く伝えました。

小清水卓二博士は、研究者、教育者、そして文化遺産保護者として、日本の植物学、そして日本の文化に多大な貢献をしました。彼の生涯と業績は、現代の私たちにとって、自然との共生、文化の継承、そして学問の重要性を改めて考えさせる貴重なものです。彼の残した著作や研究成果は、これからも多くの人々に学びと感動を与え続けるでしょう。

主な著書・報告書・論文

書籍：『万葉の草・木・花』『奈良の自然』『母と子のための奈良県の植物』『花の大和路』『日本の文様 18 桜』『真珠の小箱』シリーズなど多数
報告書：『春日山とその周辺の植物目録』『藤原宮跡発掘調査報告』『奈良市史 自然編』など多数
学術論文：数多くの学術論文を発表。植物生理生態学、万葉植物、古代植物に関する研究論文多数

受賞歴・受賞歴

国立公園功労賞
奈良県文化賞
文化財保存功労賞
勲三等瑞宝章
正四位（追叙）

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