小清水漸

小清水漸 (こしみず すすむ)

小清水漸は1944年10月19日に愛媛県で生まれた日本の彫刻家で、インスタレーションアーティストとしても知られています。京都市立芸術大学の名誉教授であり、長年にわたり教育と創作の両方で重要な役割を果たしてきました。彼は1980年から同大学の専任教員として活躍し、後に宝塚大学で学長を務めることとなりました。小清水は、風景や日常の物質に対する深い探求心を持ち、それを彫刻やインスタレーションとして表現することに努めてきました。

彼が参加した「もの派」というグループは、1960年代後半から70年代にかけて、物自体の存在を重視した作品を発表した作家たちによる集まりです。この流派のアプローチは、作家の主観的な介入を排除し、石、砂、木、ガラス、鉄などの純粋な素材の特性を強調するもので、反モダニズムの観点からアートを再定義しました。小清水はこの流派の重要なメンバーとして、実験的な作品や展覧会を通じてその理念を広めました。

来歴

小清水は1966年に多摩美術大学の彫刻科に入学するも、その後中退。1970年には「人間と物質」というテーマで開催された第10回日本国際美術展に出品し、アーティストとしてのキャリアをスタートさせました。1971年には田村画廊で初の個展を開催し、同年のパリ青年ビエンナーレにも参加。1976年と1980年にはベニスビエンナーレにも出品し、国際的な評価を受けるようになります。

彼の作品は、単なる物質の美しさを追求するのではなく、物の本質や内在する意味を探求することを意図しています。1969年に制作された《かみ》という作品は、巨大な石を袋状の和紙で包み、外見と内面の対比を鑑賞者に提示するものです。この作品を通じて、鑑賞者は石の物質性を体験し、その存在を再考することが求められます。

もう一つの代表作である《70年8月 石を割る》は、石そのものを真二つに割る行為を通じて、物質の存在感を際立たせることを目指しました。このように、彼の作品は物質とその存在の本質を探る試みとして位置づけられます。

展覧会と評価

小清水の作品は、国内外で数多くの展覧会で紹介されています。特に、2005年に「もの派—再考」という展覧会が国立国際美術館で開催され、その再評価が行われました。さらに、国際的な舞台である横浜美術館やグッゲンハイム美術館、サンフランシスコ近代美術館を巡回した「戦後日本の前衛美術」展にも参加し、その影響力を広げました。

彼は2012年にアメリカで初めての個展を開催し、同年の「太陽へのレクイエム：もの派の美術」展では、アメリカにおける小清水の立ち位置を確立しました。現在も彼はロサンゼルス、ニューヨーク、東京のBlum & Poeギャラリー、東京画廊+BTAP、そしてギャラリーヤマキファインアートに作品を展示しています。

公共コレクション

小清水の作品は、東京国立近代美術館や東京都美術館、ダラス美術館といった多くの公共コレクションに収蔵されています。彼の持つ独自の視点と問いかけは、現代アートにおける重要な位置を占めています。彼はアートの枠を超え、物質としての存在に新たな意味を付与し続けています。

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