小澤征爾さんと、音楽について話をする

小澤征爾さんと、音楽について話をする

『小澤征爾さんと、音楽について話をする』は、日本を代表する指揮者・小澤征爾と著名な作家・村上春樹による対談を収めた貴重な著作です。2011年11月30日に新潮社から刊行されたこの書籍は、翌年には第11回小林秀雄賞を受賞し、その内容の深さと多様性が広く認められました。

出版の歴史

本書は2014年に新潮文庫として文庫化され、新たに村上春樹が手がけたエッセイ「厚木からの長い道のり」が追加収録されました。このエッセイでは、小澤がジャズピアニスト・大西順子と共演した際の体験が描かれており、音楽に対する彼の情熱が伝わります。

小澤と村上の出会いには、興味深い背景があります。小澤の娘である小澤征良と村上の妻が親友であることがきっかけとなり、この二人は徐々に親しくなりました。音楽好きの二人による対話は、共通の話題を楽しむことができたのでしょう。

さらに、2013年4月には本書を基にした3枚組のCD「『小澤征爾さんと、音楽について話をする』で聴いたクラシック」がユニバーサルミュージックからリリースされ、村上自身がライナー・ノーツを書いたことも注目されました。このCDは、対談で取り上げられた曲の数々を聴くことができる特別なアルバムです。

また、2016年には英訳版『Absolutely on Music』がジェイ・ルービンの翻訳により出版され、海外でも小澤と村上の音楽論が紹介されることとなりました。

主要な内容

本書では、音楽に関する多様なテーマが取り上げられています。例えば、初回の対話ではベートーヴェンのピアノ協奏曲第三番についてじっくりと語り合い、続くセッションではカーネギー・ホールでのブラームスの演奏についての思い出が語られます。さらに、1960年代の音楽シーンやグスタフ・マーラーの作品に触れ、オペラの魅力についても楽しく討論しています。

村上春樹のエッセイでは、スイスの小さな町での経験が描かれており、彼の視点から見る音楽の世界が感じられます。また、小澤自身も「決まった教え方はなく、その時々の状況に応じて考えながら指揮をする」と語り、即興的な音楽制作の重要性を伝えています。

このように、本書は音楽を愛する人々にとって非常に魅力的な内容が詰まった一冊であり、音楽の奥深さとその楽しさを再認識させてくれる作品です。小澤の音楽に対する情熱と村上の文学的視点が交差し、読者は音楽の素晴らしい世界に引き込まれることでしょう。

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