小牧ダム

小牧ダムの概要

小牧ダム（こまきダム）は、富山県砺波市庄川町に位置する水力発電を目的とした重力式コンクリートダムです。庄川水系に属し、関西電力によって管理されています。本ダムは、1925年に着工し、1930年に完成しました。当初は、東洋で最も高いダムとして注目を浴びました。ダムには17のダムゲートが設けられ、右岸にはエレベーター式の魚道、左岸には木材運搬用のコンベアが設置されています。工学博士の物部長穂が提唱した耐震設計の理論を初めて取り入れたことが評価され、建設技術の革新にも寄与しました。

2001年には、「土木学会選奨土木遺産」に認定され、2002年には河川用ダムとして初めて文化財に登録されました。さらに、2007年には経済産業省の近代化産業遺産にも登録され、このダムが持つ歴史的価値が認められました。

建設の背景

小牧ダムの建設は、富山県出身の実業家である浅野総一郎による庄川での水力発電計画に端を発しています。浅野は太平洋側に電力を供給するという大規模な構想を画策し、1916年に水利権の利用申請を行いました。1919年には庄川水力電気を設立し、日本のダム建設技術が未熟だったため、設計をアメリカのストーン・エンド・ウェブスター社に依頼しました。ダムの建設には、安全性や地形の利点を考慮し、現在の位置に決定されました。しかし、ダム建設に対して流域の木材業者から強い反対を受けたことから、木材運搬施設と魚道が設けられるよう設計変更が行われました。

庄川流木争議

小牧ダムの建設が進められる中、木材業者「飛州木材」が流木の運送が困難になるとして建設中止を求める仮処分申請を行いました。この対立は庄川流木争議と呼ばれる騒動に発展しました。1926年には、飛州木材が知事を被告に行政裁判所に訴訟を提起し、その後も岐阜県の3村が訴訟に加わりました。1930年にダムが完成した際、飛州木材が湛水禁止の仮処分を申請し、工事が一時中止される事態となりましたが、結局ダムの堪水は認められ、発電が開始されました。争議は様々な人物によって題材にされ、多くの文学作品にも影響を与えました。

ダム建設による影響

ダム建設の結果、いくつかの新たな産物が生まれました。1932年に開設された庄川養魚場では鮭や鱒の人工ふ化が行われ、漁業の振興に寄与しました。また、庄川水力発電と日本電力の費用負担により道路の整備が進み、「百万円道路」として知られています。これにより新たな観光地も生まれ、遊覧船観光が盛んになりました。

さらに、ダム建設に伴い新たな鉄道や温泉の整備も行われ、地域経済の活性化にもつながりました。例えば、ダム完成後に観光用として開放された鉄道は、観光客を引き寄せる要因となりましたが、最終的には不採算による廃線を余儀なくされました。

現在の小牧ダム

小牧ダムは、現在も水力発電所として機能しており、認可出力は72,000kW、常時出力は32,100kWです。水車発電機にはフランシス水車が使われ、最大有効落差は70.3mです。ダムは地域の重要な電力供給源であり、多くの観光資源とともに地域に貢献しています。今後も小牧ダムの歴史的価値は見過ごされず、地域や研究の関心を引き続けることでしょう。

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