小田常胤

小田常胤：寝技の大家、その生涯と功績

小田常胤（おだ つねたね、1892年3月10日 - 1955年2月11日）は、講道館柔道9段の柔道家です。立ち技が中心だった大正・昭和期の講道館において、独自の寝技技術を確立し、高専柔道の発展に大きく貢献しました。彼の寝技は「常胤流」と称され、その名を知られています。

生い立ちと柔道との出会い

小田常胤は、山梨県南都留郡船津村（現在の富士河口湖町）に生まれました。中学校に進学するため静岡県立沼津中学校に入学し、そこで柔道を始めました。その後、上京し1910年に講道館に入門。柔道教員養成部を卒業後、國學院大學に進学し、実業界を目指して勉学に励みました。

寝技への傾倒

身長160cm、体重63kgと小柄だった小田は、体格差のある相手との試合で不利を感じ、寝技の研究に没頭します。「立っているから投げられる、投げられるから負ける。投げられないためには初めから寝て勝負をすれば良い」という独自の理論を打ち立て、寝技の技術を磨き上げました。嘉納治五郎館長からその戦法を危惧されましたが、「絶対に顔を踏まれない自信があります」と豪語し、周囲を驚かせました。

高専柔道への貢献

小田は、旧制第二高校や旧制第四高校で柔道教師を務め、寝技を指導しました。特に、旧制第二高校では、寝技に特化した指導でチームを強化し、強豪の旧制第一高校との対抗戦で勝利を収めました。また、旧制第四高校を率いて全国高専大会に出場し、優勝を争いました。彼の指導は、高専柔道の発展に大きく貢献し、その名を高めました。

講道館との関わりと葛藤

小田は、講道館でも要職を歴任し、柔道の発展に尽力しました。しかし、高段者昇段審査に形の試験が導入された際、これに合格したことで、先輩柔道家から疎まれるようになります。その後、三船久蔵との関係が悪化し、中野正三と親交を深めるなど、人間関係の面で苦労しました。

晩年と業績

晩年は、柔道競技のあり方について研究し、立ち技、寝技、立ち技寝技混用の3つに分類して競技を行うことを提唱しました。その構想は実現しませんでしたが、彼の柔道に対する情熱は衰えることはありませんでした。1955年2月11日、62歳で逝去。

小田常胤は、寝技の大家として、また高専柔道の指導者として、柔道界に大きな足跡を残しました。古流柔術に頼らず、独自の技術体系を築き上げた彼の功績は、今日でも高く評価されています。

著書に『柔道は斯うして勝て』『柔道大観』があります。

人物評価

小田は、寝技で名を成した柔道家は古流柔術の出身者が多い中にあって、古流柔術の出ではなく、飽くなき猛稽古と創意工夫によって一代で自らの技術体系を築き上げ、その芸術的な寝技を以って世に“常胤流”と称されるまでに至りました。

著書の中で、柔術を無価値なものとして排斥する当時の講道館の柔道家たちに警鐘を鳴らしていました。

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