小田急箱根鉄道線

箱根登山電車

箱根登山電車は、神奈川県小田原市に位置する小田原駅から、同県足柄下郡箱根町の強羅駅までを結ぶ電車の路線です。小田急箱根が運営するこの路線は、特に観光客に人気があり、「箱根登山電車」として広く知られています。運行名は「箱根登山鉄道」であり、路線記号はOHです。小田急電鉄小田原線と直通運転を行い、小田急線の新宿駅から続く路線です。

概要

1919年に開業されたこの路線は、日本の都市部につながる電車としては特に山岳地帯に適応した設計を持っています。初めは箱根湯本駅と強羅駅を結ぶ区間でしたが、1935年に小田原駅まで延伸されました。開業以来、スイスのベルニナ鉄道から多くを学び、そのため1979年には姉妹鉄道提携を結ぶに至ります。勾配や曲線といった困難な地形を克服し、多くの観光客を引き寄せたこの鉄道は、自然との調和を重視しながら建設されました。特に80‰の急勾配を持ち、その独特な構造と運行スタイルから「日本で最もきつい勾配の鉄道」として有名です。

特徴

勾配と曲線

箱根登山電車の最も特徴的な点は、その急な勾配です。特に箱根湯本駅から小涌谷駅の間には、80‰の勾配が存在し、これは日本の粘着式鉄道において最も急な部類に入ります。これにより、この区間は約1,000メートルを進むと高低差が80メートルもあるという特異性を持つのです。このため、普通の鉄道のようには走れず、特別な工夫が求められました。

また、急曲線も多く、30メートルという小さな半径の曲線が設けられています。建設当初から、自然景観を壊さないよう設計されたため、曲線が多くなったと言われています。これにより、登山電車は山の中を登る際の迫力と美しい風景を同時に楽しめる交通手段となっています。

三線軌条

入生田駅と箱根湯本駅間には、三線軌条が存在し、異なる軌間の電車が互いに通過できるよう設計されています。この構造は日本でも他にはあまり見られず、国際標準軌と狭軌の二種類の線路が共存しています。元々は小田急の狭軌電車が乗り入れるためのもので、技術的にも希少な事例です。これにより、迅速に移動することが可能となりました。

歴史

この鉄道の構想は1896年にさかのぼりますが、具体的な計画が進展したのは1900年以降のことです。1911年に建設許可を得ると、様々な困難に直面しつつも1919年にようやく運行を開始しました。しかし、開業初期は山を登る際に利用されることが多く、観光客が下山するために歩くという状況もありました。

その後も多くの災害や改修工事を経て、1935年には小田原駅までの延長運行が実現し、小田急電鉄との連携が進みました。特に1964年からは多くの観光客を受け入れる体制が整っていき、1991年には年間輸送人員が1千万人を超えるまでに至ります。

2019年には自然災害の影響で長期運行停止を余儀なくされたものの、2020年に復旧が完了し、再び観光客を運ぶことができるようになりました。また、2024年には事業者名が変更されますが、愛称としての「箱根登山電車」はそのまま使用される予定です。

運行形態

現在の運行形態では、箱根湯本駅と強羅駅間が単線で、全線において1時間当たりの本数も確保されています。特に観光シーズンには増便も行われるなど、訪問客に配慮した輸送がされています。元々登山電車はワンマン運転を行っておらず、全列車に車掌が乗務するため、安全性の観点からも安心して利用することが可能です。

沿線の美しい景観とともに、観光を目的とする多くの人々を魅了し続ける箱根登山電車。沿線には趣ある町並みや観光名所が点在し、訪れる人々に癒しの時間を提供しています。

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