小竜景光

小竜景光について

小竜景光（こりゅうかげみつ）は、鎌倉時代後期に備前国（現在の岡山県）で活躍した刀工、景光によって作られたとされる日本刀（太刀）です。国宝に指定されており、東京国立博物館に所蔵されています。正式な国宝指定名称は「太刀 銘備前国長船住景光 元亨二年五月日（小竜景光）」です。

概要

景光は、長船派の代表的な刀工である長光の子とされており、その作刀数は少ないながらも、名刀揃いとして知られています。小竜景光は、その中でも特に優れた作品として、刀剣研究家の佐藤寒山によって高く評価されています。

刀の名前の由来は、鎺元（はばきもと）に彫られた小さな倶利伽羅龍（くりからりゅう）の彫り物です。また、楠木正成（くすのきまさしげ）の佩刀であったという伝説から、「楠公景光（なんこうかげみつ）」とも呼ばれます。さらに、彫られた龍が鎺の下から覗いているように見えることから、「覗き竜景光」と呼ばれることもあります。

歴史

小竜景光には、様々な伝承が残されています。楠木正成の佩刀であったという説や、万里小路藤房（までのこうじふじふさ）が楠木正成に贈ったという説、豊臣秀吉が徳川家康に贈ったという説がありますが、これらの説は福永酔剣によって疑わしいとされています。

江戸時代末期には、大阪の刀屋が河内の農家から入手したとして、楠木正成の佩刀という触れ込みで本阿弥家（刀剣の鑑定を行う家）に鑑定を依頼しましたが、偽物として扱われました。しかし、この刀は江戸幕府の代官、中村覚太夫（なかむらかくたゆう）によって買い取られます。その後、いくつかの刀屋を経て、最終的に井伊直弼（いいなおすけ）が所有することになります。しかし、直弼が桜田門外の変で暗殺された後、刀は再び山田家に戻ります。

明治時代に入り、山田家から宮内省に献上され、後に東京国立博物館に移管されました。この際、山岡鉄舟が献上したという俗説がありますが、これは誤りです。また、明治天皇がこの刀をサーベル形式の軍刀拵えに仕立て、自ら佩用したという伝説もありますが、専門家の間でも意見が分かれています。

刀身の特徴

小竜景光の刀身は、後世に磨上げ（すりあげ）が行われていますが、腰反りが高く、美しい曲線を描いています。地鉄（じがね）は小板目肌で、乱映りが鮮やかに現れています。刃文は、丁子（ちょうじ）に小互の目（こぐのめ）交じりなど、変化に富んだ特徴を持っています。

具体的な寸法は、刃長が73.93センチメートル、反りが3.03センチメートル、中鋒元幅が2.94センチメートル、先幅が2センチメートルです。茎（なかご）は6センチメートルほど磨り上げられています。銘は、佩表に「備前国長船住景光」、佩裏に「元亨二年五月日」とあり、1322年の作であることがわかります。

複製品

江戸時代末期の刀工、固山宗次（こやまむねつぐ）によって、小竜景光の写しが作られています。この写しには、現在の磨り上げられた姿を模したものと、元の姿を復元したものの二種類が存在します。本物が門外不出だったため、刀剣研究家の佐藤寒山でさえ、宗次の写ししか見たことがなかったといいます。後に本物を見たとき、その出来栄えに驚いたと語られています。

まとめ

小竜景光は、その美しい姿と歴史的背景から、多くの人々を魅了する名刀です。その精巧な作りと、数々の逸話は、日本の刀剣文化を語る上で欠かせない存在と言えるでしょう。

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