小笠原忠固

小笠原忠固：白黒騒動の藩主

小笠原忠固（おがさわら ただかた）は、江戸時代後期に豊前国小倉藩を治めた第6代藩主です。従四位下・大膳大夫、少将という官位を持ち、小笠原家宗家の7代目当主にあたります。しかし、彼の名は、小倉藩を衰退へと導いた「白黒騒動」の当事者として歴史に刻まれています。

生涯

藩主就任まで

明和7年（1770年）に播磨国安志藩主・小笠原長為の長男として生まれました。母が側室であったため、一旦は次男とされましたが、寛政6年（1794年）に本家である小倉藩主・小笠原忠苗の養嗣子となります。そして文化元年（1804年）に忠苗の隠居を受けて家督を継ぎ、小倉藩主となりました。

藩主就任後、文化4年（1807年）には朝鮮通信使の接待という大役をこなし、その上、小倉城が火災で焼失したため、再建費用がかさむなど、藩財政は逼迫していきました。

白黒騒動

文化8年（1811年）、小笠原忠固は江戸家老の小笠原出雲に対し、幕政への参与を希望する意思を伝えます。当時の小倉藩の家格から考えると、幕政に参加するには老中という重職に就くのが相当であり、そのためには他の幕閣への莫大な賄賂が必要となることが予想されました。出雲は、当時の不安定な幕政と外国船の出没という状況を鑑み、藩政と財政の再建こそが重要であると諫言しました。

しかし、忠固は再び出雲に老中への運動を命じます。出雲はやむなく従いますが、莫大な猟官運動の費用は藩財政を破綻寸前にまで追い込みました。これに反対する藩内勢力は、出雲を奸臣とみなし、暗殺を企てます。出雲自身は難を逃れますが、腹心が暗殺されるという事態に発展しました。

反対派も一枚岩ではなく、出世欲や出雲への嫉妬から、狼煙台を勝手に使用して藩士を扇動し、出雲の暗殺を執拗に謀りました。さらに、反対派の一部はストライキを起こし、隣国の福岡藩領である筑前国黒崎へ出奔するという事態に発展しました。この一連の騒動が「白黒騒動」と呼ばれるようになりました。

幕府の裁定により、出雲は家老を罷免され失脚、反対派の一部は処刑、そして藩主である忠固自身も100日間の閉門処分を受けました。忠固の罪が比較的軽かったのは、小笠原家の幕府創業時からの忠誠心と、幕政への貢献を望む忠固の強い忠誠心が評価されたためでした。

晩年

閉門後、忠固は年貢増徴などにより藩財政の再建を図りますが、白黒騒動による出費と混乱で借金は15万両にまで膨れ上がり、藩財政は依然として窮乏したままでした。百姓の窮乏を哀れんだ奉行が、独断で年貢減免を行った後に切腹するという悲劇も起こりました。

文政年間には村方騒動も発生するなど、混乱が続く藩を再建するため、忠固は土木工事や倹約令を出しますが、効果は上がりませんでした。天保14年（1843年）に74歳で死去し、跡を次男の忠徴が継ぎました。墓所は東京都台東区松が谷の海禅寺にあります。

評価

小笠原忠固は、決して無能な藩主ではありませんでした。しかし、幕政への参与という野望が、結果的に藩を混乱に陥れ、衰退を招いたことは否定できません。白黒騒動は、彼の治世における最大の汚点として、歴史に名を残しています。

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