小笠原長煕

小笠原長煕：岩槻から掛川へ、治水事業で名を刻んだ藩主

小笠原長煕は、武蔵国岩槻藩の2代藩主としてその生涯を始め、後に遠州掛川藩の初代藩主となる人物です。小笠原忠知を祖とする小笠原家の5代当主にあたります。

長煕は、岩槻藩初代藩主である小笠原長重の次男として誕生しました。宝永7年（1710年）、父・長重の隠居に伴い、25歳で岩槻藩の藩主職を継承します。しかし、その翌年の宝永8年（1711年）、わずか1年足らずで掛川藩へ移封されました。この異動は、幕府の政策によるものと考えられますが、その詳細な理由は歴史資料から明らかになっていません。

掛川藩主となった長煕は、新たな領地での藩政確立に尽力しました。前任者からの負債や領内整備など多くの課題があったと考えられますが、彼は着実に藩政基盤を固めていきました。特に、治水事業に力を注ぎ、享保7年（1722年）には大井川と天竜川の治水工事を敢行しました。これらの河川は、掛川藩の経済と住民生活に大きな影響を与える重要な水系です。治水工事の成功は、長煕の優れた行政手腕を示すものと言えるでしょう。この事業は、掛川藩の農業生産向上や災害防止に大きく貢献し、領民からの信頼と支持を確固たるものにしたと考えられます。

長煕は、積極的な政策を実行した一方、家督相続についても綿密な計画を立てていたようです。元文4年（1739年）、48歳で婿養子の長庸に家督を譲り、隠居しました。長庸は、小笠原長丘の次男です。この家督相続は、藩政の安定と継続を考慮した、長煕の政治的判断によるものだったと考えられます。

隠居後は、静かに余生を過ごしたと推測されますが、その詳細は明らかではありません。宝暦2年（1752年）、63歳でこの世を去りました。

長煕の生涯は、藩主としての責任感と優れた政治手腕、そして治水事業への尽力によって彩られています。岩槻から掛川へ、そして隠居に至るまで、彼は常に時代の変化に対応し、藩の発展に貢献しました。彼の治世は、掛川藩にとって重要な転換期であり、その功績は今もなお、掛川藩の歴史に刻まれています。

系譜

父: 小笠原長重（岩槻藩初代藩主）
正室: 染（松平頼貞の娘）
子女: 娘（次女、小笠原長庸の正室）
養子: 小笠原長賢（小笠原長剛の次男）、小笠原長庸（小笠原長丘の次男）

小笠原長煕は、単なる藩主としてだけでなく、治水事業などを通して領民の生活向上に尽力した、有能な統治者であったと言えるでしょう。彼の功績は、掛川藩の歴史において重要な位置を占めていると言えるでしょう。

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