小野五平

小野五平：家元外からの十二世名人

小野五平（おの ごへい）は、天保2年（1831年）に阿波国美馬郡脇町（現在の徳島県美馬市）で生まれ、大正10年（1921年）に91歳で没した将棋指しです。江戸時代末期から明治・大正時代にかけて活躍し、十二世名人を襲位しました。

生涯

若年期と修業時代

小野五平は、旅籠の長男として生まれ、幼名は土井喜太郎と名乗っていました。弘化3年（1846年）には皮膚病の治療のため有馬温泉に滞在中に、天野宗歩の門下とされる棋士に見出され、長崎で数年間修業を積みました。その後、天野宗歩に師事しますが、短期間で天野が江戸へ帰ってしまったため、直接指導を受ける機会は多くありませんでした。

名人位への挑戦

1860年、再び天野宗歩に師事するため江戸へ出ますが、既に天野は死去していました。その後、十一代大橋宗桂に師事し、文久元年（1861年）には四段を許されます。慶應2年（1866年）に五段、明治2年（1869年）に六段に昇段。その後、土井五香と改名し、家名を継いで尾野五平と名乗るようになります。

明治に入り、小野は福沢諭吉、森有礼、服部金太郎、芳川顕正といった有力者を後援者に持ち、名人位を目指すようになります。明治12年（1879年）には小野五平に改名。同年、十一世名人となる予定であった八代伊藤宗印との対局で勝利し、次期名人候補として認められました。

十二世名人襲位

明治26年（1893年）に八代伊藤宗印が死去すると、名人位は5年間空位となります。そして、明治31年（1898年）、小野五平はついに十二世名人を襲位しました。家元出身以外の初の名人であり、終身名人制が維持されました。

その後

小野の名人襲位に対し、伊藤門下の関根金次郎が異議を唱えましたが、小野の高齢を考慮し、死後に名人を継ぐことを勧められ、異議を取り下げました。しかし、小野が長命であったため、関根は全盛期に名人を襲位することができず、実力名人制への転換を決意したとも言われています。

坂田三吉が台頭すると、関根と不仲であった小野は、1915年（大正4年）に坂田に八段位を認め、関根の対抗馬にしたと言われています。大正6年（1917年）には関根と和解し、対戦して勝利しましたが、この対局は小野に花を持たせたという見方が一般的です。大正9年（1920年）には長寿の祝賀会が開かれ、大正10年（1921年）に91歳で生涯を閉じました。

人物

小野五平は、家元制度が色濃く残る将棋界において、家元出身ではないにも関わらず名人にまで上り詰めた人物です。その実力と人柄で多くの人々を魅了し、将棋界に大きな影響を与えました。

また、日本チェス界の草分け的存在でもあり、将棋界からチェスの強豪選手を輩出するきっかけを作りました。

弟子

溝呂木光治など

新聞将棋の開始

小野五平と多賀常容との対局が新聞に掲載されたことが、新聞将棋の始まりとされています。

まとめ

小野五平は、家元制度を打ち破り、実力で名人に上り詰めた人物として、将棋史に名を残しています。その功績は、現代将棋界にも大きな影響を与え続けています。

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