少女 (源氏物語)

『源氏物語』第二十一帖「少女」：あらすじと解説

帖名「少女」の由来

「少女」の帖名は、光源氏と夕霧が詠んだ歌に由来します。この歌は、五節舞を舞う舞姫たちを指していると考えられています。帖の物語全体を貫く、繊細で儚い恋と、周囲を取り巻く複雑な人間関係が、この歌の情緒と重なり合っています。

物語の舞台：光源氏と夕霧、そして周囲の人々

物語は、光源氏が33歳の夏から35歳冬までの出来事を描いています。この頃、光源氏の息子である夕霧は12歳で元服を迎えます。しかし、光源氏は夕霧を特別扱いせず、六位のまま大学に入れました。

同じ頃、光源氏の養女である斎宮女御は冷泉帝の中宮となります。光源氏は太政大臣に昇進し、権力基盤を固めます。一方、立后争いで光源氏に敗れた内大臣は、自身の次女である雲居の雁を東宮妃にしようと画策していました。

禁断の恋と、それを阻む権力

雲居の雁は、幼い頃から一緒に育った従兄弟である夕霧と密かに恋仲にありました。この密通を内大臣が知ると激怒し、雲居の雁を自らの邸に引き取ると宣言。二人の恋は、権力の壁によって阻まれようとしていました。

夕霧は、雲居の雁と別れることをどうしても受け入れられず、密かに彼女に会いに行きます。二人の悲しい別れの場面は、読者の心に深い悲しみと切なさを残します。しかし、二人の恋は周囲の人間によって引き裂かれてしまいます。内大臣の側近が二人の関係を非難し、雲居の雁を連れて行ってしまったのです。

新たな恋の芽生えと、挫折

時は流れ、秋が深まり新嘗祭が近づいていました。失意の夕霧は、御所で催される豊明節会を見物します。そこで彼は五節舞の舞姫、藤原惟光の娘（後の藤典侍）に心を奪われます。彼女の美しさに魅せられた夕霧は、彼女に文を送ります。しかし、舞姫は宮仕えが決まっており、夕霧の恋は実を結ぶことはありませんでした。

舞姫の兄は、夕霧からの文を妹と共に読んでいましたが、父に見つかり文を取り上げられてしまいます。しかし、文の手跡が夕霧であると知った惟光は、態度を一変させました。彼は、夕霧との関係を利用して出世することを企みます。

光源氏の晩年と、新たな邸宅

その後、夕霧は進士の試験に合格し、五位の侍従となりました。一方、光源氏は六条に広大な邸宅（六条院）を完成させました。この邸宅は四つの区画に分けられ、それぞれ春夏秋冬をテーマに造園されていました。それぞれの区画には、紫の上、花散里、明石の御方、そして秋好中宮が住むことになります。

物語の解釈

「少女」は、若き日の夕霧の恋の物語であると同時に、平安貴族社会における権力闘争、そして時代の移り変わりを象徴的に描いた物語と言えるでしょう。夕霧と雲居の雁の悲恋は、運命に翻弄される人間の弱さと強さを、同時に私たちに示しています。また、光源氏の六条院の完成は、彼の晩年の華麗さと、権力の絶頂を示していると言えるでしょう。五節舞の舞姫との出会いは、夕霧の心情の変化と、物語の新たな展開を示唆する重要な要素となっています。

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