五節舞

五節舞：雅楽の伝統と変遷

五節舞（ごせちのまい）は、日本の雅楽において唯一、女性によって舞われる舞楽です。優美な舞姿と神聖な儀式は、古来より人々を魅了してきました。この記事では、五節舞の歴史、儀式、舞姫の選出、そして近現代における公演までを詳しく解説します。

平安時代の五節舞

平安時代、五節舞は重要な宮廷儀式、特に大嘗祭（だいじょうさい）や新嘗祭（にいなめさい）の豊明節会（とよあかりのせちえ）で奉納されました。舞姫は、公卿の娘や受領・殿上人の娘など、高貴な身分の子女から選ばれ、その栄誉は一族に大きな誇りをもたらしました。時には女御が舞姫を出すこともあったと伝えられています。

しかし、平安中期以降、貴族社会では女性が公の場に姿を現すことを良しとしない風潮が強まりました。そのため、公卿たちは自身の娘を直接奉仕させるのではなく、配下の中級貴族の娘を代理として出すようになったと考えられています。有名な物語『源氏物語』にも、こうした時代背景を反映した描写が見られます。

五節舞は、単なる舞楽にとどまらず、天皇と貴族との関係を強化する場としての側面も持っていました。特に、舞姫と天皇の性的関係が成立していたとする見解もあり、その役割は時代とともに変化していったと考えられています。

舞姫の選出と奉仕は、莫大な費用を伴う奢侈的なものでした。宮中への宿泊施設の設営や舞姫・侍女たちの装束など、多大な費用が支出され、それが社会問題にもなりました。延喜14年（914年）には、舞姫の選出方法を変えるべきという意見が提出されたほどです。

選ばれた舞姫たちは、新嘗祭の前々日と前日にそれぞれ「帳台試（ちょうだいのこころみ）」と「御前試（おんまえのこころみ）」として、天皇の前で練習の成果を披露しました。祭日当日の「童女御覧（わらわごらん）」では、舞姫に付き従う童女の姿が天皇によって見定められました。

五節舞の起源については、天武天皇の時代に吉野で天女が現れて舞ったという伝説や、中国の古代音楽思想との関連性が指摘されています。

平安時代の儀式と演奏

平安時代の五節舞の儀式は、詳細な手順と格式を備えていました。帳台試、御前試、童女御覧といった天皇による厳格な審査を経て、豊明節会で舞が奉納されました。豊明節会は、新嘗祭や大嘗祭後の公式な晩餐会であり、舞姫たちはここで舞を披露しました。

中世から近世

鎌倉時代から室町時代にかけて、五節舞の儀式は簡略化されていきます。室町中期には、五節舞は一時途絶えました。

近世、大嘗祭や新嘗祭が復活した際も、五節舞はしばらくの間行われませんでしたが、宝暦3年（1753年）に復活しました。しかし、近世の五節舞は、平安時代の盛大な儀式とは異なり、舞そのものの奉仕が中心となりました。

近現代

明治天皇の大嘗祭では五節舞は行われず、大正天皇の大礼で復活しました。この際に、新たな振り付けや衣装が制定され、華族令嬢から舞姫が選ばれました。昭和天皇の大礼、そして平成、令和の即位の礼でも、五節舞は行われ、現代においても伝統が受け継がれています。近年では、一般公演も行われるようになりました。

まとめ

五節舞は、平安時代から現代まで続く、日本の貴重な伝統芸能です。その歴史は、宮廷文化や社会風習の変化を反映しており、舞姫の選出や儀式、衣装など、様々な要素が時代とともに変遷を遂げてきました。しかし、その優美な舞姿と神聖な儀式は、現代においても人々を魅了し続けています。五節舞の未来は、伝統の継承と新たな創造が求められるでしょう。

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