少女ムシェット

映画『少女ムシェット』について

『少女ムシェット』（原題: Mouchette）は、1967年に公開されたフランス映画で、ロベール・ブレッソンが監督・脚本を務めました。ジョルジュ・ベルナノスの小説を原作とし、貧困にあえぐ少女の過酷な運命を、徹底したリアリズムで描き出しています。ブレッソンの代表作の一つであり、後の映画作品に大きな影響を与えました。

作品概要

この映画は、主人公である14歳の少女ムシェットが、貧困、家庭内暴力、周囲の無理解といった、過酷な状況に置かれている様子を、容赦なく映し出します。監督であるブレッソンは、観客に感情移入を強いるような演出を避け、淡々としたカメラワークで、少女の絶望的な状況を冷徹に描いています。この手法は、観る者に強烈な印象を与え、映画史に残る傑作として高く評価されています。

あらすじ

病気の母親と、アルコール依存症で暴力を振るう父親を持つムシェットは、学校でも貧困を理由に無視され、孤独な日々を送っています。ある日、学校からの帰り道で森に迷い込んだムシェットは、密猟者の男と出会います。その男は、てんかんの発作と幻覚に苦しんでいました。その後、ムシェットは密猟者の男に暴行され、母親は亡くなり、父親からの暴力も続きます。さらに、森番の妻からも怒鳴られるなど、誰からも理解されず、どこにも居場所がないという絶望的な状況に陥ります。

キャスト

ムシェット：ナディーヌ・ノルティエ
父親：ポール・エベール
その他：マリア・カルディナール、ジャン＝クロード・ギルベール

スタッフ

監督・脚本：ロベール・ブレッソン
製作：アナトール・ドーマン
原作：ジョルジュ・ベルナノス
撮影：ギスラン・クロケ
音楽：クラウディオ・モンテヴェルディ、ジャン・ウィエネル

日本での公開

日本では、1974年にコロネット商会の子会社であるコロネット・シネマ・アンテレクチュエルによって買い付けられ、エキプ・ド・シネマが配給しました。その後、1996年にはフランス映画社によって再公開されています。

作品の影響

『少女ムシェット』は、その後の映画作品に大きな影響を与えました。特に、少女の過酷な運命を描いた映画として、ダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』やラース・フォン・トリアー監督の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』などに影響を与えたと言われています。これらの作品にも共通する、社会の底辺で生きる人々の苦悩を冷徹な視点で描くスタイルは、『少女ムシェット』から受け継がれたものと言えるでしょう。

映画のテーマ

この映画は、貧困、家庭内暴力、孤独といった、社会的な問題点を浮き彫りにしています。特に、子供に対する虐待や、貧困によって子供が希望を失っていく様子は、観る者の心に深く突き刺さります。また、社会の無関心や、人間関係の希薄さも描かれており、現代社会にも通じる普遍的なテーマを扱った作品であると言えるでしょう。

まとめ

『少女ムシェット』は、単なる悲劇的な物語ではなく、人間の心の奥底にある絶望や、社会の不条理を深く考えさせられる作品です。映画史に残る傑作として、今もなお多くの人々に愛され、語り継がれています。

外部リンク

少女ムシェット - allcinema
Mouchette - IMDb（英語）

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