少女地獄

少女地獄

夢野久作の短編小説集『少女地獄』は、1936年に黒白書房から発表されました。この作品は、探偵小説の要素をふんだんに取り入れた、幻想的で不気味な物語が特徴であり、彼の独特な文体が色濃く表れています。特に、全体が手紙の形式で進行する「書翰体系式」が、作品をより一層独自のものとして際立たせています。特に印象的なのは、収録された短編「殺人リレー」、「何んでも無い」、「火星の女」の3つです。

あらすじ

何んでも無い

物語は、医師である臼杵の日常から始まります。彼の前に、姫草ユリ子という自称19歳の少女が現れます。ユリ子は看護婦としての腕は確かですが、彼女には病的とも言える虚言癖が存在しました。この性格が次第に周囲の人々に知られるようになり、ユリ子は姿を消してしまいます。１ヶ月後、彼女が自殺したという悲報が臼杵の耳に入りますが、物語はこれで終わりません。彼女が抱えていた秘密や、周囲の人々の反応が次第に明らかになっていき、読者は心理的なサスペンスに引き込まれます。

殺人リレー

次に紹介するのは、「殺人リレー」という物語です。田舎から上京し、バスガイドとして働くトミ子の元に、小学校の同級生でバスガイドのツヤ子から手紙が届きます。その内容は、彼女の配属された運転士新高が結婚詐欺師かつ殺人者であるため注意すべきだという警告でした。驚くことに、ツヤ子はその翌週、不審な事故死を遂げてしまいます。新高がトミ子の配属先にやってくると、彼女はツヤ子の敵を討つことを決意しますが、洗練された魅力を持つ新高に心を奪われ、葛藤が生まれます。この物語は、人物の心理と殺人というテーマが交錯し、意外な展開を見せます。

火星の女

最後の話、「火星の女」では、県立女学校を舞台にした不気味な事件が連鎖します。学校で発見された焼身自殺体を皮切りに、校長の失踪、女教師の自殺、さらには学内での大金の横領といった暗い出来事が立て続けに発生します。やがて、卒業生の遺書が見つかり、校長を含む関係者の隠された悪事が暴露されることに。この物語は、権力者の腐敗や集団心理を巧みに描写し、読者に深い考察を促します。

影響と関連作品

夢野久作の『少女地獄』は、単なる小説に留まらず、後の文芸作品や映画にも影響を与えています。1977年には日活によって映画化され、1997年にはケイエスエスによる作品も制作されています。また、青空文庫においては、新字新仮名での読みやすい版も提供されており、広く読まれています。

このように『少女地獄』は、複雑な人間関係や心理描写を持ち、アブノーマルな事件が織りなす物語で構成されており、夢野久作の文学的才能と独特の世界観を堪能できる一冊です。

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