少年十字軍

少年十字軍について

少年十字軍（しょうねんじゅうじぐん）は、1212年にフランスとドイツで結成された十字軍の一つであり、若者たちが中心となって聖地奪還を目指しました。彼らの運動は、神の啓示を受けたとされる少年エティエンヌの呼びかけによって始まり、多くの少年や少女が集まって結成されました。

背景

この運動の発端は、第4回十字軍（1202年 - 1204年）が、エルサレムではなく、東ローマ帝国の首都コンスタンティノポリスを攻め、私利私欲に走った結果として失敗したことにあります。それを受け、ローマ教皇インノケンティウス3世は新たな十字軍を編成するように命じ、各地に説教師を派遣して兵員を募りました。この背景の中で、少年十字軍はエティエンヌのリーダーシップのもと、信者たちの熱意から誕生しました。

運動の展開

エティエンヌは「神の手紙」を受け取ったと称し、自らが聖地回復の使命を持っていると説いて回りました。その結果、数千から最大2万人とも言われる少年少女が彼に従い、マルセイユに向けて出発しました。しかし、聖地へ行くための船がなく、十分な資金も持たない彼らは、厳しい環境にさらされることになりました。

商人たちが支援を名目に接触し、無償で船を提供すると申し出ますが、その中の多くが航海中に難破し、アレクサンドリアでは奴隷商人に売り飛ばされるという悲惨な運命に見舞われました。このような運命に直面した少年たちは、理想とは裏腹の現実に直面し、非常に厳しい状況を強いられました。

一方、ドイツでは青年ニコラスが同様の運動を煽り、少年たちがイタリアを目指して移動しました。彼らも教皇の説得により故郷に戻ることとなりますが、最終的に戻れた仲間は少数に留まりました。

名称と解釈

一般には「少年十字軍」として知られていますが、近年の研究では大人の庶民も多く含む民衆十字軍として解釈されています。少年たちが神の啓示を受けたことが強調される一方で、後世の記録者たちが感動的な物語を作り上げた結果、少年少女として語られることが多くなったと考えられています。また、当時の言葉で貧しい人々を「少年」と呼んだことから、誤解が生じた可能性も指摘されています。

文化的影響

少年十字軍は、歴史上の出来事としてだけでなく、文学や芸術においても影響を与えました。三島由紀夫の短編小説『海と夕焼』の主人公はエティエンヌをモデルにしています。また、ハーメルンの笛吹き男の伝説にも少年十字軍が背景にあるという説があります。さらに、少年十字軍を題材にした漫画や小説も存在し、史実を基にした物語が作り出されています。

このように少年十字軍は、宗教的信仰、社会的状況、そして文化的な影響が交差する複雑な運動であり、その後の歴史においても重要な意義を持つ事件とされています。

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