尚褫

明代の官僚、尚褫の生涯

尚褫（しょう ち、生没年不詳）は、明代に活躍した官僚であり、字を景福と称しました。汝寧府羅山県を本貫とする彼は、1439年（正統4年）に進士に及第し、官僚としての道を歩み始めます。

初期の官僚生活と進言

進士及第後、尚褫は行人に任じられます。1442年（正統7年）には、大臣を囚人として捕らえることのないよう求める上書を行い、その公正な姿勢を示しました。1446年（正統11年）には、南京貴州道御史に抜擢され、その才能を認められます。

しかし、1447年（正統12年）には、周銓を弾劾したことが原因で逆に獄に下され、雲南の虚仁駅丞に左遷されるという不遇を経験します。それでも、尚褫はほどなくして御史に復帰し、再びその職務を全うしました。

災異と僧侶問題への提言

1454年（景泰5年）冬に発生した災異を契機に、尚褫は数々の問題点を指摘する上書を行います。その中で、彼は「礼をつかさどる者が王振の勢力を恐れて規制せず、出家して僧となる者が多いままになっている。増えすぎた僧を帰農させるべきだ」と進言しました。この提言は、当時の礼部尚書であった胡濙の反感を買い、尚褫は豊城知県に左遷されてしまいます。

さらに、邑豪による誣告で獄に繋がれるという困難にも見舞われますが、まもなく釈放され、彼の潔白が証明されました。

民衆救済への尽力

1465年（成化元年）、尚褫は大臣共同の推薦により、湖広僉事に抜擢されます。1471年（成化7年）には、都御史の項忠が荊州府・襄陽府の流民を急いで郷里に帰そうとしたため、多くの者が道中で命を落とすという悲劇が起こりました。この状況を目の当たりにした尚褫は、その惨状を憐れみ、湖広巡撫の呉琛に報告し、この強制的な帰郷を止めさせようとしました。

しかし、呉琛が項忠にこの件を報告したため、項忠は激怒し、尚褫を弾劾します。朝廷は尚褫の行動が民衆を救済するためであったことを理解し、流民の現地戸籍への編入を認め、帰郷を望む者には帰らせるという措置を取りました。この一件からも、尚褫の民衆への深い思いやりがうかがえます。

晩年と顕彰

1474年（成化10年）、尚褫は成化帝からその治行を顕彰されます。その後、彼は官を辞して静かにその生涯を閉じました。尚褫の生涯は、不正を許さず、民衆の救済に尽力した官僚の模範として、後世に語り継がれています。

まとめ

尚褫は、明代の官僚として、その職務に忠実でありながらも、常に民衆の立場に立って行動した人物でした。時の権力者との対立を恐れず、正しいと信じた道を貫き通した彼の姿は、現代においても多くの人々に勇気を与えてくれるでしょう。



参考文献

* 『明史』巻164 列伝第52

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