尤継先

尤継先（ゆう けいせん）：明代の隻眼の勇将

尤継先（生没年不詳）は、明代の軍人であり、その卓越した武勇と不屈の精神から「独目将軍」と称えられました。彼の生涯は、数々の戦場での活躍と、晩年の政争による失脚という、波乱に満ちたものでした。

生涯初期と青海での活躍

尤継先の出自は楡林衛にあり、万暦年間に軍功を重ねて大同副総兵にまで昇進しました。1590年（万暦18年）、青海地方で火落赤と真相率いる部族が洮州・河州に侵攻し、副総兵の李連芳らが戦死するという事態が発生します。この危機に際し、尤継先は署都督僉事に進み、総兵官として劉承嗣に代わって固原の守備を任されました。

火落赤らは、莽剌川・捏工川の二つの川を拠点とし、チベット系民族を誘って西寧を侵犯しました。また、オルドス部のボショクト・ジノンが水泉で敗れ、黄河の凍結に乗じて北に逃れる中、その配下である可卜列・宗塔児ら約500人が莽剌川南山に滞留していました。

尤継先は、チベット人800人を先導役とし、かつての総兵であった劉承嗣や游撃の原進学、呉顕らとともに、700里を疾駆して南山を急襲しました。激戦の末、敵を打ち破り、150人以上を斬首、12人を捕虜とする大戦果を挙げました。この際、かつて李連芳を殺害した可卜列の甥である拝巴爾的も捕縛されました。

帰還の途上、敵は撒川まで追撃してきましたが、尤継先の軍の堅固な備えを見て夜間に撤退しました。この戦いを機に、青海・オルドス地方の諸部族は、鎮羌・西寧・石羊への侵攻を諦め、火落赤は西海へと拠点を移しました。この功績により、尤継先は官秩を進められ正式に都督僉事となり、世襲の官秩が一階加増されました。しかし、間もなく病のため官を退き故郷へ帰りました。

遼東での戦いと薊州鎮での苦境

その後、尤継先は僉中軍府事として再び登用されました。1593年（万暦21年）冬には、遼東総兵官に任じられます。泰寧衛の炒花が2000騎を率いて韓家路に侵入すると、尤継先は諸軍を率いてこれを撃退しました。しかし、再び病に倒れ、官を辞して帰郷することになります。

1596年（万暦24年）には、薊州鎮総兵官として再起を果たします。しかし、この地で尤継先は新たな試練に直面します。朶顔衛の長昂が班・白2部長を率いて侵入し、石門を通過して山海関を攻撃したため、京東の住民は通州に避難する事態となりました。

尤継先は山海関から出撃しましたが、敵はすでに略奪を終えて退却した後でした。この対応に対して、総督の蹇達は尤継先が追撃を怠ったこと、また降伏者800人を独断で任用しようとしたことに激怒し、尤継先の異動を求めました。後任には杜松を推す声が上がる一方で、巡撫の劉四科は尤継先の留任を支持しました。

しかし、兵科の宋一韓らが蹇達に同調し、さらに別の事件で尤継先を弾劾した結果、尤継先は罷免され、失意のうちに家で亡くなりました。彼は片目を失いながらも、武芸を習い、戦場で活躍したことから、人々から「独目将軍」として敬愛されていました。

尤継先の生涯は、その武勇と功績にもかかわらず、晩年は政治的な思惑に翻弄され、不遇な結末を迎えることとなりました。しかし、彼の戦場での活躍と、隻眼ながらも不屈の精神で戦い抜いた姿は、後世に語り継がれるべきでしょう。

参考文献

* 『明史』巻239 列伝第127

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