朶顔衛

朶顔衛（ドガンえい）について

朶顔衛は、14世紀から16世紀にかけてモンゴリア東南部で活動した遊牧部族です。泰寧衛、福余衛とともにウリヤンハイ三衛を構成し、その中でも特に重要な役割を果たしました。

起源と名称

朶顔衛は、モンゴル帝国成立以前から存在したウリャンカイ部の後裔であり、モンゴル側では「ウリヤンハイ（兀良哈）」と呼ばれていました。朶顔衛の頭目は、ウリャンカイ部出身のジェルメを始祖としています。

『華夷訳語』には、朶顔衛指揮同知脱児豁察児の言葉として、「ウリャンハイ人はチンギス・カンの時代より額客多延温都児山（Eke Doyan Ündür、大ドヤン山の意）の地にいた」との記述があります。このドヤン山が「朶顔」の名の由来であると考えられています。また、大元ウルス時代には、遼陽等処行中書省開元路に朶因温都児兀良哈千戸所が設置されており、これが朶顔衛の前身であると見られています。

明朝では、種族名であるウリヤンハイの音写として「兀良哈」とも記されました。同時代には、同じ名称を持つウリヤンハイ・トゥメン、タンヌ・ウリャンカイ（唐努烏梁海）、ワルカ／オランカイ（兀良哈）といった勢力が存在しますが、これらはそれぞれ異なる勢力です。

ウリヤンハイ三衛における役割

ウリヤンハイ三衛の中で、朶顔衛は最も南に位置していました。そのため、明朝との交流が最も多く、元来三衛の中心であった泰寧衛に代わって、三衛の代表的な存在となりました。

解体を免れた唯一の衛

三衛の中で、朶顔衛は唯一解体を免れ、後にカラチン旗として存続しました。このことは、朶顔衛が当時の政治情勢において重要な位置を占めていたことを示唆しています。

まとめ

朶顔衛は、ウリヤンハイ三衛の中で最も重要な部族の一つであり、モンゴル帝国から明朝にかけての歴史において重要な役割を果たしました。その歴史と文化は、現代にも影響を与えています。

参考文献

和田清『東亜史研究(蒙古編)』東洋文庫,1959年

関連項目

北元
東方三王家
ウリヤンハイ三衛
泰寧衛（オンリュート）
福余衛（オジェート）
ウリャンカイ（ウリヤンハイ）
ハラチン

もう一度検索