尹伊桑

尹 伊桑（ユン・イサン）の生涯と音楽

尹 伊桑（ユン・イサン）は、1917年9月17日に日本統治下の朝鮮・慶尚南道統営で生まれました。彼のルーツは咸安にあり、後にドイツへ移住し、音楽界に多大な影響を与えました。イサン・ユンとしても知られる彼は、ドイツを拠点にしながらも、韓国文化と西洋音楽との橋渡しを試みました。

幼少期から留学まで

彼は5歳で漢学の寺子屋に通い始め、8歳で統営公立普通学校に入学。その後、13歳になるとヴァイオリンを習い始め、町内の映画館で自身の作った旋律が流れるのを聞き、作曲を志すようになりました。父親は音楽の道に進むことに反対しましたが、彼は進学先の商業学校でも音楽を学ぶことを許され、大阪の商業学校と大阪音楽学院で音楽理論や作曲を学びました。

留学後と作曲活動

1945年の日本の敗戦後、尹は韓国の音楽教員としての活動を開始しましたが、1956年にはパリに留学。オリヴィエ・メシアンに師事後、ドイツへ移り、ベルリン芸術大学に入学しました。そこで彼は、前衛音楽の先駆者であるヨーゼフ・ルーファーから学び、新たな作風を確立しました。彼の作品には「ピアノのための五つの小品」や「弦楽四重奏曲第3番」、そして「7つの楽器のための音楽」が含まれ、特に後者はレコードにもなりました。

政治的危機と再生

演奏活動を続けている中、1963年には北朝鮮を訪問し、金日成と面会しました。しかし、1967年には西ベルリンで韓国の情報機関KCIAに拉致され、拷問を受けました。その結果、スパイ容疑で死刑宣告を受けましたが、国際的な請願により無期懲役に減刑。最終的に1969年に特赦され、自由の身となりました。これにより、尹は西ドイツに留まることになり、韓国における音楽活動は制限されましたが、彼の作品は国際的に評価され続けました。

作風の定義と影響

尹の音楽は、韓国民俗音楽を用いた「主要音」技法で知られています。この手法により、旋律の中に強烈な個性を持たせることができました。特に1970年代には旋律の復権が求められ、彼の作風はその流れに乗ることとなりました。尹はベルリン芸術大学で教鞭を執り、多くの作曲家を育成しましたが、アジア人の教授としては初めての試みでした。

晩年と功績

1994年、尹は政治活動を中断し、健康が悪化したため多くの音楽祭に参加できなくなりました。しかし彼の作品は後世に渡って演奏され、国際尹伊桑作曲賞も創設されました。晩年、彼は様々な作品を作曲し続け、1995年には最後のオーケストラ作品を発表しましたが、その数日後、肺炎により亡くなりました。彼の音楽は今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

尹伊桑は、音楽を通じて韓国と西洋の架け橋を作り、様々な文化を融合させることに成功した作曲家でした。彼の業績は、国際的に評価され続け、音楽界における重要な位置を占めています。

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