尼崎市場駅

尼崎市場駅：短命に終わった国鉄貨物駅

兵庫県尼崎市久々知に存在した尼崎市場駅は、国鉄（日本国有鉄道）の貨物駅として、昭和42年（1967年）10月1日に開業しました。東海道本線の尼崎駅から分岐する貨物支線の終点であり、同市に開設された尼崎市中央卸売市場への鉄道アクセスを担う役割を担っていました。

尼崎市には、それ以前から国道2号線沿いに卸売市場が存在していましたが、規模の狭隘さから移転が計画され、新たな市場が潮江四丁目に建設されることになりました。この市場への貨物輸送を円滑に進めるため、全長1.5kmの貨物支線が敷設され、その終点に尼崎市場駅が設置されたのです。

駅構内には3本の側線が敷設され、全国各地から集まる食料品を主に深夜から早朝にかけて受け入れていました。しかし、市場の移転計画においては、道路交通とのアクセスも重視された立地が選定されたため、他の市場駅と比較してもトラック輸送への移行が早く進みました。その結果、開業からわずか13年後の昭和55年（1980年）9月末をもって鉄道貨物輸送は中止され、同年10月1日に駅は廃止となりました。

廃止後、駅跡地の一部には冷蔵倉庫が建設されましたが、大部分は空き地として残されています。興味深いのは、尼崎市中央卸売市場の位置関係です。福知山線の線路切り替えが行われる平成9年（1997年）までは、市場は福知山線の旧上り線と下り線の間に位置していました。そのため、尼崎市場駅もこの上下線間に存在していたことになります。1997年の線路切り替えによって上り線が下り線側に移設されたため、現在はかつての駅跡地のすぐ西側を福知山線の列車が運行しています。

尼崎市場駅は、短期間ながらも地域の物流に貢献した貨物駅でした。しかし、時代の変化と交通手段の転換によって、その役割を終え、歴史の片隅に消えていった存在と言えるでしょう。現在、駅の面影はほとんど残っていませんが、この地でかつて活気ある貨物輸送が行われていたことを知る人は、少なくなっているかもしれません。

年表

昭和42年（1967年）10月1日：開業
昭和55年（1980年）10月1日：廃止

隣の駅

日本国有鉄道 東海道本線 貨物支線
尼崎駅 - 尼崎市場駅

参考文献

神戸新聞総合出版センター『ひょうご懐かしの鉄道 廃線ノスタルジー』 pp.72 - 73

関連項目

日本の鉄道駅一覧
廃駅
近畿の市場駅（京都・百済・大阪・神戸・姫路）

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