尾三電力

尾三電力株式会社の概要と歴史

尾三電力株式会社は大正の終わりから昭和の初めにかけて、日本に存在した電力会社であり、中部電力のパワーグリッドに組み込まれる前の重要な一企業でした。1911年に徳倉六兵衛を筆頭とする発起人によって、矢作川の水利権の取得を目的に、初めは「矢作川水電株式会社」として事業がスタートしました。 この会社設立は、矢作川の開発を志向したものであり、やがて大同電力の傍系企業となっていきます。

会社設立の背景

尾三電力の設立は、1911年7月に矢作川と支流段戸川の水利権を申請したことから始まります。当初は大同電力が参画するまで、発起人は徳倉六兵衛のみでしたが、他の発起人は早々に中立を決め、大同電力の傘下へと変わっていきました。最終的には、1921年4月に段戸川の水利権を取得し、その数ヶ月後の7月30日に尾三電力株式会社として法人化されました。

設定された資本金は500万円で、初代社長には大同電力の常務であった関口寿が就任し、本社は名古屋市に設立されました。 尾三電力の主な工事は、矢作川本流の「時瀬」地点と段戸川の「旭」地点とされ、開発が進められることとなりました。

発電所の建設と供給体制

尾三電力は早速、第一期工事として段戸川の旭発電所を1921年8月に着工し、1922年6月には竣工を果たしました。ここでは1,105キロワットの出力が得られるようになりました。続いて1923年1月には矢作川の時瀬発電所も完成し、5,558キロワットの出力を実現しました。これらの発電所からは大同電力との既存の送電網を通じて、名古屋へと電力を供給していました。

当時の経営は比較的順調であり、年率12パーセントの配当を実現していましたが、依然として大同電力の供給料金に経営が左右される状態でした。 そのため、親会社である大同電力は、経営の自主性が欠如したことを背景に尾三電力を存続させる意義を見失い、1928年に合併を決定します。

合併の経緯と影響

合併契約は1928年に締結され、尾三電力の株主らに対して大同電力の株式の引き換えが行われました。結果として、同年9月30日に正式に合併が実施され、尾三電力は法人としては解散しました。その後、多くの従業員は新たに設立された傍系会社である伊那川電力へと移籍し、経営体制は大同電力の傘下に完全に統合されます。

合併時の社長は斎藤直武で、彼も同社に移行しました。また、尾三電力が未開発のまま終わった笹戸発電所は、後に大同電力の取り扱いによって1934年にようやく着工され、運転が開始されました。

電灯供給事業の実績

尾三電力は、設立時から「特殊関係地に於ける電灯の供給」を企業目的に含めており、発電所の地元である東加茂郡旭村において小規模ながら電灯供給も行っていました。1928年4月時点での供給実績は、82戸で197灯の電灯を供給するに至りました。これらの事業は、1922年から1923年にかけて行われた配電工事の結果、実現したものでした。

尾三電力の短い歴史は、多くの資源開発と供給の実績の証でもあり、当時の電力業界において重要な役割を果たしました。

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尾三電力株式会社は、電力供給の実績とその後の大同電力への統合を通じて、日本の電力業界に名を刻む企業でした。

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