関口寿

関口寿（せきぐちひさし）は、明治後期から昭和初期にかけて日本の電気工学分野と実業界で活躍した人物です。明治15年（1882年）11月21日、東京府にて関口慶吉の長男として生まれ、その生涯を通じて、日本の初期電力産業や石油産業の発展に重要な役割を果たしました。残念ながら、その正確な没年は明らかになっていません。

経歴

若くして工学を志した関口は、明治34年（1901年）7月に第一高等学校第二部工科を卒業後、明治37年（1904年）7月には東京帝国大学工科大学電気工学科を卒業しました。大学での専門教育を修めた後、当時の官公庁である逓信省に入省し、通信技手としてそのキャリアをスタートさせました。翌年には通信局に配属されていた記録があります。

明治38年（1905年）6月、関口は通信技師（高等官）へと昇進し、通信局電気試験所へ勤務を命じられます。さらに技術的な見識を深めるため、明治40年（1907年）には電気事業の視察を目的としてアメリカ合衆国へ留学しました。その後、イタリアやスイスでも学んだのち、翌年の12月に日本へ帰国しました。

帰国後の明治42年（1909年）7月、逓信省に電気局が新設されると、関口は電気局電気試験所および技術課の兼務となりました。明治43年（1910年）3月には逓信技師に任じられます。同年4月には、日本の水力発電事業の推進を目指し、全国的な河川の調査を行うために設けられた逓信省臨時発電水力調査局の技師も兼任しました。この調査局には大正2年（1913年）6月に廃止されるまで在籍し、日本の水力資源開発に関する基礎的な調査に貢献しました。

官界を離れ、実業界へ転身したのは大正5年（1916年）11月25日のことです。逓信技師を依願退官した後、同年12月11日付で正五位に叙されました。

退官後、関口は関西地方の主要な電力会社であった大阪電灯の第5代技師長に就任します。当時の大阪電灯は財政的な困難を抱えており、発電設備の拡張や改良が滞っていました。さらに大正7年（1918年）には火力発電所から発生する煤煙問題が発生し、燃料である石炭価格の高騰にも見舞われるなど、技術的な難題が山積していました。関口はこうした状況の中で技術部門を統括しました。

大正8年（1919年）10月、大阪電灯の関係者も加わって水力発電会社の日本水力が設立されると、関口は浅野長七とともに常務取締役に就任します。これに伴い、大阪電灯の技師長の職は退いています。日本水力では、山本条太郎が社長、大阪電灯の宮崎敬介が副社長を務めました。

その後、第一次世界大戦後の恐慌を契機に、日本水力は福澤桃介が率いる木曽電気興業および大阪送電との合併へと動き出します。大正10年（1921年）2月25日、これらの会社が合併し、資本金1億円という当時としては巨大な電力会社である大同電力が誕生しました。関口は合併後の大同電力でも引き続き常務取締役を務めます。さらに同年7月30日には、愛知県を流れる矢作川での水力開発を目的として設立された大同電力の関連会社、尾三電力の初代代表取締役社長に就任しました。しかし、大同電力の常務取締役は関東大震災発生後の大正12年（1923年）12月26日に退任し、尾三電力の社長も時瀬発電所建設などの第一期工事の完成を見届けた後の大正13年（1924年）11月に斎藤直武に後任を譲り退きました。

昭和3年（1928年）には、元大阪電灯取締役の島徳蔵やその娘婿である実吉雅郎らによる製油所建設計画に参加します。島の指示を受け、同年6月にはアメリカへ渡り、ガソリン製造に関する特許権をユニバーサル・オイル・プロダクツ（UOP）社から購入するための仮契約を結びました。帰国後の同年10月25日、日本揮発油株式会社（現在のJXTGエネルギー、現・日揮ホールディングス）が発足すると、会長の島、社長の実吉のもとで初代専務取締役に就任しました。会社は大阪府南部での製油所建設を目指しますが、当時の不況による石油業界全体の不振に加え、地元住民からの反対運動や資金調達の難しさが重なり、計画は頓挫してしまいます。結局、同社は特許権を他社に提供する形で存続を図ることになりましたが、事業の具体的な進展がないまま、昭和8年（1933年）1月に関口は専務取締役を退任しました。

その後の関口の足取りは明確ではありませんが、昭和12年（1937年）に発行された『人事興信録』には、名を「関口寿久」に改め、昭和11年（1936年）まで「弥栄鉱業」という会社の社長を務めていたものの、調査時点では現職がないと記載されています。これ以降の詳しい経歴や没年については不詳です。

親族

妹の琴子は、後に大蔵大臣（第32代）を務めた大蔵官僚の藤井真信に嫁いでいます。

関口寿

関口 寿

経歴

親族

関連項目

関口寿