尾世川正明

尾世川正明（おせがわ まさあき）は1950年に生まれ、詩人、医師、そして画家として多彩な才能を発揮している日本の文化人です。東京都大田区北千束で産声を上げ、その後品川区大井町で少年時代を過ごしました。都立日比谷高等学校を経て、千葉大学医学部を卒業し、医学の道を志しました。

大学卒業後、尾世川は成田赤十字病院に医師として勤務を開始しました。内科医として経験を積む一方、救急医療の最前線でも活躍しました。病院内で重要な役割を担い、内科部長、救命救急センター長、さらには院内感染管理医といった要職を歴任しました。日々の診療や病院運営に深く関わりながら、医療従事者としての責任を果たしました。

医療の専門家としての活動と並行して、尾世川は10代の頃から詩作に情熱を傾けてきました。その創作活動は現在まで途切れることなく続いています。20代の頃には、丸山薫らによって復刊された影響力のある文芸誌、第四次『四季』に積極的に作品を投稿し、詩壇への第一歩を踏み出しました。また、詩人の萩原康吉氏とは二人で同人誌「島」を制作するなど、若い頃から同人活動を通じて詩人仲間との交流を深めていました。その後も、木津川昭夫氏が発行する『ホルン』や『あらの』、望月苑巳氏主宰の『孔雀船』、さらに後年には川中子義勝氏発行の『ERA』といった多様な同人誌に参加し、精力的に作品を発表し続けました。これらの活動は、尾世川の詩的世界を形成する上で重要な基盤となりました。

長年の詩作活動は高い評価を受け、2013年には詩集『フラクタルな回転運動と彼の信念』によって、権威ある第25回富田砕花賞を受賞しました。この受賞は、詩人尾世川正明の地位を不動のものとしました。また、水野るり子氏が発行する同人誌『ペッパーランド』でも執筆を行い、土曜美術社出版販売から刊行された現代詩文庫シリーズの一冊、『水野るり子詩集』では解説を執筆するなど、他の詩人の作品に対する深い洞察力も示しています。近年もその活動は衰えを見せず、2019年からは自身の表現の場として個人誌『虚数と半島』を発行し続けています。さらに、日本の現代詩壇における貢献も大きく、2021年から2023年にかけては月刊誌「詩と思想」の投稿欄選者として、新たな才能の発掘と育成に尽力しました。2023年から2025年の期間は、日本詩人クラブの理事として、日本詩人クラブ賞をはじめとする重要な三賞の選考を担当するなど、詩壇の運営にも深く関わっています。所属団体としては、日本現代詩人会、日本詩人クラブ、そして日本文藝家協会の会員となっています。

尾世川の創作活動は詩にとどまりません。画家としても優れた才能を持ち、その作品は広く認められています。特に二科展には計14回にわたり入選・出品を重ねましたが、その後特定の美術団体には所属せず、自由な立場で制作を続けています。千葉市市美術展や千葉県県美術展など、地方の主要な美術展でも作品を発表し、受賞歴もあります。また、グループ展や自身の個展も積極的に開催しており、絵画表現においても独自の道を追求しています。

これまでに発表された尾世川正明の主要な詩集には、以下のようなものがあります。

『花をめぐる神話』（1980年、花神社）
『みえないきものたちの天文学』（1987年、花神社）
『誕生日の贈物』（1993年、土曜美術出版販売）
『海馬に浮かぶ月』（2004年、思潮社）
『新・日本現代詩文庫70 尾世川正明詩集』（2009年、土曜美術社出版販売）
『フラクタルな回転運動と彼の信念』（2013年、土曜美術出版販売） - 第25回富田砕花賞受賞作
『鼻行類の盗賊たち』（2017年、土曜美術出版販売）
『糸切り歯の名前』（2021年、思潮社）

また、絵画作品の個展も開催しています。

尾世川正明絵画作品展「ポエジーと顔」（2015年4月、八重洲ギャラリー）
尾世川正明絵画作品展（2018年11月、日本橋ちばぎんひまわりギャラリー）

尾世川正明は、医学の専門知識と芸術的な感性を融合させ、多岐にわたる分野で独創的な活動を展開し続ける稀有な存在です。

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