尾崎富士雄

尾崎 富士雄

青森県八戸市が生んだ不屈のボクサー、尾崎富士雄（1961年10月7日生）は、「和製デュラン」の異名を取る元プロフェッショナルボクサーである。帝拳ボクシングジムに所属し、ウェルター級を主戦場とした。

アマチュアからプロへ

八戸工業大学第一高等学校時代には、ボクシングでインターハイライトウェルター級準優勝という実績を残している。プロのリングには1980年5月19日にデビュー。奥秋照雄を相手に、初回KOという鮮烈な勝ち方でキャリアの第一歩を記した。

プロ入り後、東日本ジュニアウェルター級新人王に輝くが、全日本新人王決定戦では西日本代表の赤井英和と対戦。この注目の一戦で3回KO負けを喫し、初の大きな挫折を味わう。

日本王座獲得と激しい攻防

尾崎はその後、階級をライト級に上げ、1982年8月6日には成田城健が保持していた日本ライト級王座に挑戦。判定ながらも勝利を収め、第28代王者となった。この王座は3度防衛に成功するが、1983年6月3日、シャイアン山本との対戦で判定負けを喫しタイトルを失う。

しかし、わずか3ヶ月後の9月2日に行われた再戦では、再びシャイアン山本に判定勝ち。第30代日本ライト級王者としてベルトを取り戻したが、その後の初防衛戦となる友成光との対戦では7回KOで敗れ、再び王座を手放す結果となった。

ウェルター級での栄光と世界挑戦

ライト級での波乱のキャリアを経て、尾崎はウェルター級へと主戦場を移す。1985年6月6日、串木野純也を判定で破り、第30代日本ウェルター級王座を獲得。この王座も2度防衛したが、1986年2月6日には田端信之に判定負けでタイトルを明け渡す。

しかし、尾崎は再び立ち上がる。同年6月5日の田端との再戦では5回KO勝ちを収め、第32代日本ウェルター級王者として再び頂点に立った。この王座は、チャンピオン・カーニバルの優勝者である友成光を相手にKO勝利で2度目の防衛に成功。この防衛戦を最後に、世界挑戦を見据え王座を返上した。

満を持しての世界初挑戦は1988年2月5日、アメリカ・ニュージャージー州アトランティックシティで行われた。対戦相手はWBA世界ウェルター級王者マーロン・スターリング。試合は王者が優位に進めたものの、終盤、尾崎は果敢に攻め込み主導権を握る。最終ラウンドにはスターリングをロープ際に追い詰め連打を見舞い、王者からマウスピースが飛び出す場面もあった。

当時のニューヨーク・タイムズ紙は、スターリングの優位は揺るがなかったとしつつも、王者の消極的な戦いぶりは観客の不満を買い、ブーイングが飛び交ったと報じている。インターバル中にはプロモーターが王者に対して激しい檄を飛ばす一幕もあったという。最終的にスターリングがユナニマス・デシジョンで勝利したが、そのパフォーマンスはプロモーターや多くの観客に戸惑いを与えたと伝えられている。

世界挑戦後、尾崎は1988年7月7日にフランシスコ・フェラーを判定で破り、OPBF東洋太平洋ウェルター級王座を獲得した。この王座も2度防衛に成功した後、返上している。

世界再挑戦と引退

1989年12月10日、尾崎は後楽園ホールで再びWBA世界ウェルター級王座に挑む。相手はマーク・ブリーランド。世界ランキング1位の指名挑戦者として臨んだ一戦だった。しかし、3回終盤、ブリーランドの左アッパーが古傷のある右瞼を切り裂き大量出血。この傷が響き、4回35秒でレフェリーストップによるTKO負けを喫した。この試合を最後に、尾崎富士雄は惜しまれつつ現役生活にピリオドを打った。

引退後は、美容室を経営する夫人の故郷である福岡県に移り住み、会社員としてセカンドキャリアを歩んでいる。

戦績・獲得タイトル・入場曲

戦績: 31戦25勝（16KO）6敗
獲得タイトル:
第28代日本ライト級王座（防衛3）
第30代日本ライト級王座（防衛1）
第30代日本ウェルター級王座（防衛2）
第32代日本ウェルター級王座（防衛2=返上）
第18代OPBF東洋太平洋ウェルター級王座（防衛2=返上）
入場曲: 「BEHIND THE RAIN」（ハーブ・アルパート）

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