尾崎敏

尾崎敏（おざき さとし）

概要

尾崎敏（1929年7月4日 - 2017年7月22日）は、日本生まれのアメリカ合衆国の物理学者です。高エネルギー物理学、素粒子分光学、ハドロン分光学を専門とし、特に加速器を用いた実験研究で大きな功績を残しました。陽子シンクロトロンによるレッジェ極理論の実証実験や、日本初の大型高エネルギー衝突型加速器「TRISTAN」、相対論的重イオン衝突型加速器「RHIC」の建設を主導しました。また、国際的な科学交流にも尽力し、日米両国の科学技術の発展に貢献しました。

来歴

生い立ちと学歴

大阪大学大学院で物理学を学び、1955年に修士課程を修了。その後、博士課程に進学しましたが、フルブライト奨学生として渡米し、マサチューセッツ工科大学（MIT）で博士課程に入学しました。1959年にはMITでPh.D.を取得。大阪大学の博士課程は1957年に休学しました。

研究者としてのキャリア

MIT卒業後、ブルックヘブン国立研究所（BNL）に研究員として採用され、助手、助[[教授]]、教授と昇進しました。1968年にはスペクトロメーターグループの主任に就任。1972年にはBNLの専任教授となり、終身在職権を得ました。

1981年、日本の高エネルギー物理学研究所（KEK）に招かれ、教授に就任。日本初の大型高エネルギー衝突型加速器「TRISTAN」の建設を指揮しました。1983年にはトリスタン計画推進部の研究総主幹となり、1986年に「TRISTAN」を完成させました。その後、1987年にはKEKの加速器研究部研究総主幹に就任しました。

1989年、アメリカに戻り、BNLの重イオン加速器計画責任者として、相対論的重イオン衝突型加速器「RHIC」の建設を主導。1999年にRHICを完成させました。その後、BNLではNSLS-II計画の加速器システム部長、上席プロジェクト顧問、所長上席顧問などを歴任。2012年にBNLを退職し、翌年には名誉専任教授の称号を贈られました。

研究内容

尾崎敏の研究は、高エネルギー物理学、素粒子分光学、ハドロン分光学といった分野に及びます。BNLでは、陽子シンクロトロン「BNL-AGS」を用いて、レッジェ極理論の実証実験に取り組みました。また、大型オンライン多重粒子スペクトロメータ「MPS」の建設にも携わりました。

KEKでは、「TRISTAN」の建設を指揮し、世界最高エネルギーの加速器を実現しました。「TRISTAN」では、高エネルギー衝突により電磁相互作用の特徴を明らかにするとともに、新たな重い粒子の発見を目指しました。また、BNLでは「RHIC」の建設を主導し、重イオン衝突実験を可能にしました。このRHICには、理化学[[研究所]]の協力により、偏極陽子を加速する機能が実装されました。

学術活動と受賞

アメリカ[[物理学会]]のフェローを務め、国際物理フォーラムの議長なども歴任しました。また、国際リニアコライダー計画にも参画しました。

これらの業績が評価され、2007年にはIEEEの粒子加速器科学技術賞、2009年にはアメリカ[[物理学会]]のロバート・R・ウィルソン賞を受賞しました。2012年には、日米間の科学技術交流に貢献したとして在ニューヨーク日本総領事館総領事表彰を受けました。2013年には、瑞宝中綬章を受章しました。

略歴

1955年：大阪大学大学院理学[[研究科]]修士課程修了
1955年：大阪大学大学院理学[[研究科]]博士課程入学
1955年：マサチューセッツ工科大学大学院博士課程入学
1956年：マサチューセッツ工科大学研究助手
1957年：大阪大学大学院理学[[研究科]]博士課程休学
1959年：マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了
1959年：ブルックヘブン国立研究所助手
1961年：ブルックヘブン国立研究所助手
1963年：ブルックヘブン国立研究所助[[教授]]
1966年：ブルックヘブン国立研究所教授
1968年：ブルックヘブン国立研究所スペクトロメーターグループ研究主任
1972年：ブルックヘブン国立研究所専任教授
1981年：高エネルギー物理学研究所物理研究系教授
1981年：高エネルギー物理学研究所物理研究系研究主幹
1982年：高エネルギー物理学研究所トリスタン計画推進部衝突ビーム測定器研究系研究主幹
1983年：高エネルギー物理学研究所トリスタン計画推進部研究総主幹
1987年：高エネルギー物理学研究所加速器研究部研究総主幹
1989年：ブルックヘブン国立研究所RIHC計画責任者
2005年：ブルックヘブン国立研究所NSLS計画加速器システム部部長
2007年：ブルックヘブン国立研究所NSLS-II計画上席プロジェクト顧問
2010年：ブルックヘブン国立研究所所長上席顧問
2013年：ブルックヘブン国立研究所名誉専任教授

受賞歴

2007年：粒子加速器科学技術賞
2009年：アメリカ[[物理学会]] ロバート・R・ウィルソン賞
2012年：在ニューヨーク日本総領事館総領事表彰

栄典

2013年：瑞宝中綬章

脚注

注釈

出典

関連項目

S行列の理論
加速器
高エネルギー加速器研究機構
強い相互作用
電磁相互作用
ブルックヘブン国立研究所

外部リンク

* NSLS-II Project Staff: Satoshi Ozaki - 尾崎を紹介するブルックヘブン国立研究所のページ

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