尾張名所図会

尾張名所図会（おわりめいしょずえ）

『尾張名所図会』は、江戸時代末期から明治時代初期にかけて刊行された、尾張国（現在の愛知県西部）の地誌です。この書は、尾張藩士で学者であった岡田文園と、春日井郡枇杷島で枇杷島橋の橋守役を務めていた野口市兵衛家の8代目・野口梅居によって著されました。挿絵は、尾張藩士で画家の小田切春江とその師である森高雅が担当し、当時の尾張国の風景や名所が生き生きと描かれています。

概要

全13巻からなる『尾張名所図会』は、尾張国の八つの郡の名所を網羅的に紹介しています。執筆には約3年を費やし、天保9年（1838年）から天保12年（1841年）にかけて行われました。前編7巻は天保15年（1844年）に刊行されましたが、その費用は野口家の財産をほぼ使い果たすほど莫大なものだったといいます。後編6巻は、明治13年（1880年）に愛知県の資金援助を受け、名古屋の書肆「永楽屋」の片野東四郎によって刊行されました。

この貴重な地誌は、現在、愛知県図書館や名古屋市博物館などに収蔵されており、当時の尾張国の歴史や文化を知る上で重要な資料となっています。

内容

『尾張名所図会』は、前編と後編に分かれており、それぞれ以下の郡を扱っています。

前編

愛智郡（1〜5巻）
知多郡（6巻）
海東郡・海西郡（7巻）

後編

中島郡（1・2巻）
春日井郡（3・4巻）
葉栗郡（5巻）
丹羽郡（6巻）

各巻には、それぞれの郡の名所や旧跡、寺社などが詳細に記述されており、当時の人々の生活や文化、風俗を知ることができます。また、挿絵は、文章の内容を補完し、読者の理解を深めるのに役立っています。

小治田之真清水（おわりだのましみず）

『小治田之真清水』は、『尾張名所図会』の補遺版として、岡田文園によって編纂されました。全8巻で構成され、嘉永6年（1853年）に前編（4郡5巻）が刊行されました。しかし、後編（4郡3巻）は、文園が万延元年（1860年）に亡くなったため、草稿のまま完成しませんでした。その後、昭和5年（1930年）になって、名古屋温古会によって活版印刷で出版され、世に出ることとなりました。

参考文献

前田栄作・水野鉱造 著 『尾張名所図会 絵解き散歩』 風媒社、2006年、ISBN 4-8331-0126-2

外部リンク

国会図書館デジタルコレクション
尾張名所図会. 前編　巻１　愛智郡
尾張名所図会. 前編　巻２　愛智郡
尾張名所図会. 前編　巻３　愛智郡
尾張名所図会. 前編　巻４　愛智郡
尾張名所図会. 前編　巻５　愛智郡
尾張名所図会. 前編　巻６　知多郡
尾張名所図会. 前編　巻７　海東・海西郡
尾張名所図会. 後編　巻１　中島郡
尾張名所図会. 後編　巻２　中島郡
尾張名所図会. 後編　巻３　春日井郡
尾張名所図会. 後編　巻４　春日井郡
尾張名所図会. 後編　巻５　葉栗郡
尾張名所図会. 後編　巻６　丹羽郡
尾張名所図会. 附録　巻１
尾張名所図会. 附録　巻２
尾張名所図会. 附録　巻３
尾張名所図会. 附録　巻４
尾張名所図会. 附録　巻５
尾張名所図会. 附録　巻６,７,８
愛知県図書館デジタルライブラリー 『尾張名所図会』前編
愛知県図書館デジタルライブラリー 『尾張名所図会』後編
愛知県図書館デジタルライブラリー 『尾張名所図会』附録
文化遺産オンライン：尾張名所図会 前編

もう一度検索