風媒社

有限会社風媒社について

有限会社風媒社は愛知県名古屋市を拠点にする出版社で、1963年に設立されました。社名は「本を介して情報が風に乗って広がる」という意味が込められています。初代代表の稲垣喜代志により創業され、現在は在日韓国人三世の劉永昇が編輯長を務めています。風媒社は、原子力発電や環境問題などの社会的なテーマに焦点を当てた書籍や、名古屋市を中心とした地域に関する書籍を多数刊行し、知識や情報の普及に貢献しています。日本の出版社団体であるNR出版会や日本出版者協議会に所属しています。

歴史

創業者の稲垣は1933年に愛知県碧海郡刈谷町に生まれました。法政大学では文学部から法学部に転部し、学生運動に積極的に参加しました。卒業後は学生社に入社しましたが、後に日本読書新聞に転職し、記者として経験を積みました。1963年に日本読書新聞を退社し、名古屋に移り風媒社を設立したのです。

初期の風媒社は、思想系の翻訳書を多数刊行しましたが、1970年代以降は子育てや陶芸、洋画に関連する書籍が増え、社会問題に関する書籍も多く手掛けてきました。特に1967年に発行した『青空をかえせ』は、四日市ぜんそくの被害者に焦点を当てた作品であり、当時大きな注目を集めました。また、1993年には慰安婦問題に関する証言集『破られた沈黙』を刊行し、後に『無窮花の哀しみ』に改題されました。1995年に刊行された『原発事故…その時、あなたは！』は、2011年に起きた福島第一原子力発電所の事故を受けて再評価されました。

さらに、1993年に出版された『さくら道 太平洋と日本海を桜で結ぼう』は、その翌年に映画化され、ロングセラーとして現在まで人気を誇っています。

2011年には創業者の稲垣が代表を退任し会長となり、山口章が新たに社長に就任しました。2017年には老朽化したビルから堀川沿いの新しい場所に移転し、同年10月28日に稲垣が逝去しました。

2021年には名古屋市芸術奨励賞を受賞し、文芸分野における出版社として初の栄誉に輝きました。さらに、2022年には中日文化賞を受賞し、その活動が広く認知されています。

特徴と出版物

風媒社の出版第1号は、新堂広志の短歌集『はるかなる陽ざし』であり、短歌関連の書籍にも力を入れています。また、2003年から2007年の間に刊行された「短歌ヴァーサス」では、若手歌人の作品を数多く紹介し、文学界での活動の場となりました。社会科学、ノンフィクション、文学書に加えて、近年では尾張地方に関するガイドブックの発行も増加しています。

毎年約40から50冊を刊行しており、2021年時点での総刊行点数は2000冊を超えるという成果を上げています。さらに、中部大学の発行書籍の販売元としても活動しています。

主な出版物

• - 小関智弘『粋な旋盤工』1984年
• - 中村儀朋『さくら道：太平洋と日本海を桜で結ぼう』1994年
• - 朝日新聞名古屋社会部『町長襲撃：産廃とテロに揺れた町』1997年

定期刊行物

• - アリーナ（年一回発行、中部大学発行、風媒社発売）

風媒社は、情報や知識を「風」に乗せて広める役割を果たしており、地域や社会に対する深い視点を持つ数多くの書籍を提供しています。

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